「行政書士に頼みたいが、費用の判断基準がわからない」「ネットで見つけた事務所が安いけど、本当に大丈夫?」
——こうした疑問を持つ経営者の方は多いはずです。
行政書士の報酬は2002年の報酬規程廃止以降、各事務所が自由に設定できます。
そのため同じ業務でも事務所によって費用が大きく異なるのが現実です。
さらに、許認可・補助金・契約書など業務の種類や案件の難易度によっても金額は変わります。
本記事では「費用の一覧を見ればわかる」という単純な話ではなく、「なぜ費用が変わるのか」「高い・安いをどう判断すべきか」という本質的な基準を、行政書士の視点から率直に解説します。
1.行政書士の費用は「報酬」+「法定費用」の2本立て
行政書士に支払う費用は大きく2つの要素で構成されています。
この違いを理解しておくだけで、見積もりを受け取ったときの判断精度が格段に上がります。
① 行政書士への報酬(手数料)
事務所ごとに異なる
書類作成・申請代行・相談・コンサルティングなどへの対価。
各事務所が自由に設定するため、金額に差が生じます。
② 法定費用(実費)
法律で定められた固定費用
許認可の申請手数料・登録免許税・証明書取得費用など。
どの事務所に依頼しても同額です。
③ 実費・日当(必要な場合)
案件により発生
窓口への出張が必要な場合や、証明書類の取得代行費用。
事前に確認することをおすすめします。
複数の事務所から見積もりを取る際は、「報酬のみの金額」と「法定費用・実費込みの総額」が混在していることがあります。
単純に金額を並べて比べるのではなく、「何が含まれていて、何が含まれていないか」を一つひとつ確認してください。
2.費用が案件によって大きく変わる4つの理由
「行政書士の費用はいくらですか?」という質問に、一律の答えを出すことはできません。
それには明確な理由があります。
1
業務の種類による違い
許認可申請・補助金申請・契約書作成・相続手続きなど、業務の種類によって作業内容がまったく異なります。
複雑な許認可ほど、調査・書類作成・窓口対応に時間と専門知識が必要となり、報酬も高くなります。
2
案件の難易度による違い
同じ「建設業許可の新規申請」でも、資格要件を満たしている場合と、10年分の実務経験を書類で証明しなければならない場合では、作業量がまったく異なります。
難易度が高いほど費用も上がるのは当然です。
3
サポート範囲の違い
特に補助金申請では「申請書類を作るだけ」の事務所と「採択後の交付申請・実績報告まで一貫してサポート」する事務所では、業務の量と責任の重さがまるで異なります。
費用が高い事務所が対応範囲も広いケースが多いです。
4
事務所の専門性・実績による違い
採択実績が高い、特定分野の専門家である、認定支援機関に登録しているなど、専門性と実績を持つ事務所は、それに見合った報酬設定をしています。
逆にいえば、低価格の事務所が必ずしも「お得」ではありません。
費用の「高い・安い」は、金額だけでは判断できません。
「何をどこまでやってくれるのか」「その結果として何が得られるのか」をセットで考えることが、正しい判断の出発点です。
3.「安い行政書士」に潜む3つのリスク
費用が安い事務所を選ぶことは一見合理的に見えますが、行政書士選びでは「安さ」だけを基準にすると失敗するケースがあります。
ホームページに最低価格のみを掲載し、実際に依頼すると書類取得費用・交通費・修正対応費などが追加請求されるケースがあります。
「最初から適切な事務所に頼んだ方が安かった」という結果になることも少なくありません。
見積もり段階で「この金額に含まれないものは何か?」を必ず確認することが大切です。
許認可申請や補助金申請は、書類の完成度や戦略によって結果が大きく変わります。
特に補助金申請では、事業計画書の説得力が採択率を直接左右します。
安価な事務所が「書類を作るだけ」で採択戦略まで考えてくれない場合、申請が却下され、費やした時間も費用も無駄になるリスクがあります。
補助金の場合、採択されてからが本番です。交付申請・実績報告・証拠書類の整備など、採択後の手続きを正しく行わなければ、最終的に補助金を受け取れないケースもあります。
「申請まで」しか対応しない事務所と、「採択後の実績報告まで」一貫対応する事務所では、サービスの中身が根本的に異なります。
「○○万円〜」という表示は最低価格です。
実際の費用は案件の内容・難易度・対応範囲によって変わります。
安さをアピールする広告ほど、総額・対応範囲・アフターフォローの有無をしっかり確認してください。
あくまでも私見ですが、士業(行政書士のように「士」が付く業種)の選択では「安かろう悪かろう」の傾向が強いです。
4.「高い行政書士」が高い理由―本当の価値とは何か
では、相場より高い報酬を設定している行政書士はぼったくりなのでしょうか。
そうとは限りません。正当な理由がある「高さ」と、そうでない「高さ」を見極めることが重要です。
- 実績・採択率を開示していない
- 業務範囲・対応範囲が不明確
- 追加費用の説明が曖昧
- 質問への回答が遅い・曖昧
- 専門性・資格の根拠がない
- 補助金の採択実績が明確
- 採択後まで一貫してフォロー
- 認定支援機関など実績・資格あり
- IT・財務・経営まで総合対応
- 丁寧なヒアリングと明確な提案
行政書士に払う報酬は「コスト」ではなく「事業への投資」と捉えることが重要です。
たとえば補助金申請で100万円の補助金を獲得できれば、適切な報酬を払っても大きなリターンが残ります。
一方、安い事務所に依頼して申請が通らなければ、支払った費用および時間は丸々損失になります。
「いくら払うか」ではなく、「この依頼によって、どれだけのリターンや安心が得られるか」で判断することが、賢い行政書士選びの基本です。
費用対効果の視点を持つことで、「高い・安い」の本質的な意味が見えてきます。
5.費用よりも重要な「依頼前の5つの確認事項」
費用の金額を比べる前に、以下の5点を必ず確認してください。
これを押さえておくだけで、「頼んで失敗した」という事態のほとんどは防げます。
報酬・法定費用・実費・消費税がそれぞれ分けて明示されているか確認する。
「込み込みでいくら」という提示は内訳が不明なため注意が必要です。
「申請まで」か「採択・認可後のフォローまで」かを明確にする。
特に補助金申請は採択後の手続きまで対応してもらえるかが非常に重要です。
補助金なら採択率や採択件数、許認可なら取扱件数など、具体的な実績を尋ねる。
「多数の実績があります」という曖昧な表現には注意しましょう。
補助金申請や経営支援が絡む場合、認定支援機関への登録があるかどうかが、対応できる業務の幅に直結します。
説明がわかりやすいか、質問に誠実に答えてくれるか、長期的に信頼関係を築けそうかを見極める。
行政書士との関係は一度きりではなく、継続的なパートナーシップであることが理想です。
まとめ
- 行政書士の費用は「報酬」と「法定費用(実費)」の2本立てで構成されます
- 費用は業務の種類・難易度・対応範囲・専門性によって大きく変わります。一律の相場では判断できません
- 「安い」事務所には、追加費用・申請失敗・採択後フォローなしという3つのリスクが潜むことがあります
- 「高い」事務所が高い理由には、実績・専門性・一貫対応という正当な根拠があるケースがほとんどです
- 費用の金額より先に、内訳・対応範囲・実績・資格・相性の5点を確認することが失敗しない選び方の基本です
- 行政書士への報酬は「費用」ではなく「投資」。リターンで判断することが賢い選択につながります