「AIが発達したら、行政書士の仕事はなくなってしまうのでは?」
——近年、こうした声を経営者の方から多く聞くようになりました。
結論から申し上げます。行政書士の仕事はなくなりません。
ただし、「変化に対応できる行政書士」と「従来のやり方にこだわる行政書士」の間には、これから大きな差が生まれていきます。
本記事では2026年時点の業界動向を整理しながら、デジタル化・AIとどう向き合うべきかを具体的に解説します。
1.2026年の行政書士業界を取り巻く「3つの変化」
① 行政書士法改正(2026年1月施行)
2026年1月、改正行政書士法が施行されました。
今回の改正の大きな特徴の一つが、行政書士の職責として「デジタル社会への対応」が明記されたことです。
これは単なる努力目標ではありません。
行政書士として業務を行う以上、デジタル対応は「あって当然」の要件になった、ということを意味します。
紙とハンコの手続きを当然のように続けている事務所は、やがて「プロとして時代遅れ」と判断されるリスクがあります。
一方で、この改正は行政書士の業務範囲の拡大も意図しています。
デジタル化時代に対応できる行政書士には、これまで以上に活躍のフィールドが広がるとポジティブに捉えることが重要です。
② 行政手続きのオンライン化の加速
デジタル庁主導のもと、各種行政手続きのオンライン化が急速に進んでいます。
これまで窓口へ出向いて紙の書類を提出していた手続きが、次々とオンライン申請へ移行しています。
この変化は「書類を代わりに作って提出するだけ」という旧来型の業務モデルには逆風です。
しかし同時に、新しいデジタル手続きへの理解が追いつかない中小企業経営者にとっては、「頼れるデジタル手続きのプロ」への需要が生まれています。
③ 生成AIの実務活用が本格化
ChatGPTをはじめとする生成AIの実務活用が、あらゆる業種で本格化しています。
行政書士業務も例外ではありません。
書類のひな型作成・法令調査・定型文書の生成など、これまで時間のかかっていた作業がAIによって大幅に効率化されています。
重要なのは「AIに仕事を奪われる」という発想ではなく、「AIを使いこなして、より高付加価値な業務に集中する」という発想への転換です。
行政手続きのオンライン化は、従来型業務の縮小と新たな需要の創出という両面をもたらします。
対応できる行政書士にはむしろ追い風と考えています。
2.「行政書士の仕事がなくなる」は本当か?
ネット上では「行政書士の仕事はAIに取って代わられる」という言説が目立ちますが、実態はどうでしょうか。
行政書士の取り扱い業務は10年前の約7,000種類から現在は10,000種類以上に増加してらしいです。
法改正や新技術の登場により、新たな許認可業務が次々と生まれているからのようです。
ドローン飛行許可申請・民泊開業の許認可・外国人雇用に関する在留資格申請などはその代表例です。
確かに、定型的・反復的な書類作成作業はAIによって効率化・代替が進むでしょう。
しかし行政書士の本質的な価値は書類の「作成代行」にあるのではなく、クライアントの状況を把握し、最適な手続きを選択し、申請を通すための戦略を立てる「判断と信頼」にあります。
行政書士の業務は書類作成だけではありません。
相談・コンサルティング・申請戦略の立案など、AIには代替できない「人間の判断と信頼関係」こそが核心で、そのために行政書士を利用していただきたいです。
3.AIを「武器」にする行政書士の具体的な活用法
行政書士はAIをどう活用すべきでしょうか。
当事務所でも実践している活用例を紹介します。
活用例① 書類ひな型の作成補助
申請書類のひな型や説明文書の初稿作成にAIを活用することで、作業時間を大幅に短縮できます。
ただしAI出力はあくまで「下書き」。
法令との整合性確認や個別事情への対応は、専門家の目が不可欠です。
活用例② 法令リサーチの効率化
最新の法改正情報や行政通知の調査にAIを補助的に活用することで、リサーチ時間を削減し、より多くの案件に対応できるようになります。
活用例③ 補助金申請の書類品質向上
補助金申請では事業計画書の説得力が採択率を左右します。
AIで文章の論理構成や表現をブラッシュアップしつつ、内容の正確性・独自性は人間が担保する役割分担が有効です。
ただし、審査の過程で事業計画書のAI利用度合いを測定し始めていますので、十分にお気を付けください。
4.2026年以降、行政書士が伸びる?分野とは
外国人雇用・在留資格手続き
人手不足を背景に外国人を採用する中小企業が増加。
在留資格の申請は種類が多く手続きが複雑なため、専門家への依頼需要が高い成長分野です。
ただし、審査期間が以前よりも長期化していますので、その点を考慮してください。
補助金申請サポート
2026年度から「IT導入補助金」はAI導入への補助が強化される見通しです。
申請ルールが複雑なため、申請から採択後の交付申請・実績報告まで一貫対応できる専門家の価値は今後さらに高まります。
事業承継・相続
少子高齢化の進展により中小企業の事業承継・相続に関する手続き需要は拡大し続けています。
許認可の引き継ぎや契約書の整備など、行政書士が中心的役割を担えます。
相続の分野は弁護士、司法書士との競合もあります。
5.「変化を恐れない行政書士」が中小企業経営者に選ばれる
中小企業経営者の皆さんから見て、「頼りになる行政書士」とはどのような存在でしょうか。
書類を作ってくれるだけの「手続き代行業者」では、もはや不十分です。
経営者が本当に求めているのは次の3つではないでしょうか?
- 補助金の採択率を高めてくれる戦略眼と実績
- デジタル化の波を一緒に乗り越えてくれるITリテラシー
- 財務・経営面までカバーできる総合的な経営支援力
まとめ
- 2026年の行政書士法改正により「デジタル対応」は義務的要件になりました
- 行政書士の取り扱い業務は10,000種類以上に拡大しており、「仕事がなくなる」は誤解です
- AIは行政書士の仕事を奪うのではなく、効率化・付加価値向上の道具です
- 外国人雇用・補助金・事業承継の3分野は特に成長が見込まれます
- 選ばれる行政書士の条件は「書類作成力」から「経営・デジタル・戦略の総合力」へ変わっています