「補助金の申請をコンサルタント会社に丸投げしていたが、それは問題ないのか」「行政書士以外の業者が申請書類を作ってくれると言っているが、大丈夫なのか」
——2026年に入ってから、このような疑問や不安の声が増えています。

その背景にあるのが、2026年1月1日に施行された「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)です。
今回の改正は、行政書士業界だけの話ではありません。
補助金申請・許認可手続き・外国人雇用など、日常的に行政手続きを行う中小企業経営者にも直接影響します。

本記事では、改正の背景から5つの主な変更点、そして経営者として今すぐ確認すべきことまでを、わかりやすく解説します。

なぜ今回の改正が必要だったのか

今回の行政書士法改正には、大きく2つの社会的背景があります。

「闇コンサル」問題の深刻化

コロナ禍以降、補助金申請や在留資格申請の分野で、行政書士の資格を持たない事業者が「コンサル料」「手数料」「サポート費」などの名目で実質的に申請書類を作成・代行するケースが急増しました。

本来、官公署に提出する書類を報酬を得て作成・代行する行為は、行政書士法によって行政書士の独占業務と定められています。

しかし「コンサルティング料として受け取っているから問題ない」という解釈が横行し、無資格業者が依頼者に不利益を与えるトラブルも少なくありませんでした。

行政手続きのデジタル化への対応

電子申請の普及やマイナンバーの活用など、行政手続きのデジタル化が急速に進む中で、行政書士が果たすべき役割も変化しています。
専門家として国民・事業者をデジタル化の波の中でナビゲートするという新たな使命が、制度上も求められるようになりました(出典:日本行政書士会連合会 改正行政書士法について)。

2026年法改正の5つのポイント(詳細解説)

① 「行政書士の使命」の明記

改正前の行政書士法第1条は「目的」を定める規定でした。
改正後は「行政書士の使命」を明記する規定へと改められ、「行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とする」という文言が盛り込まれました。

弁護士・司法書士・社労士など他士業では従来から使命規定が存在していましたが、行政書士にはこれまで明文規定がありませんでした。
今回の改正により、行政書士の社会的役割と責任が法律上はっきりと位置づけられたことになります。

② 「職責」の新設とデジタル対応の努力義務

行政書士の「職責」規定が新設されました。
具体的には「常に品位を保持し、業務に関する法令および実務に精通して、公正かつ誠実に業務を行わなければならない」というものです。

特に注目すべきは、「デジタル社会への対応」が士業法として初めて努力義務として明文化された点です。

「情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上および当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない」という内容で、AIやデジタルツールを積極的に活用しながら業務の質を高めることが、行政書士の職責として明確に位置づけられました(出典:日本行政書士会連合会 改正行政書士法について)。

③ 業務制限規定の趣旨の明確化

今回の改正で、依頼者である経営者に最も影響があるのがこの点です。

改正後の第19条には、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。
これにより、補助金申請書類や在留資格申請書類などを、行政書士以外の者が報酬を得て作成する行為が、その名目を問わず明確に違法と位置づけられました。

重要なのは「名称ではなく実質」で判断されるという点です。

たとえ「書類作成は無料」と説明されていても、別の名目(コンサル料・管理費・パック料金など)として対価を受け取っている場合は、書類作成の対価が含まれると評価されれば法令上の問題になり得ます。

この改正は新たな禁止行為を創設したものではなく、従来から違法だった行為の趣旨をより明確にしたものです。

ただし、これまでグレーゾーンと受け取られていた慣行が明確に違法と整理されたことで、依頼する経営者側も無資格業者への依頼リスクを改めて認識する必要があります。

④ 両罰規定の整備・強化

改正前の両罰規定は、調査記録簿に関する違反行為にのみ適用されていました。
改正後は対象が大幅に拡大され、以下の違反行為についても両罰規定が適用されることになりました。

  • 行政書士または行政書士法人でない者が独占業務を行った場合
  • 行政書士の資格を持たないのに「行政書士」を名乗った場合
  • 帳簿の備付・2年間保存義務を怠った場合
  • 立入検査を妨げた場合

両罰規定とは、法人に所属する役員・従業員が違法行為を行った場合、個人だけでなく法人も罰せられる規定です。
違反した場合のペナルティは、独占業務の違反であれば1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
法人側も同様の罰金刑の対象となるため、補助金コンサルタント会社・金融機関など、従来から無資格での書類作成を行ってきた事業者にとっては、深刻なコンプライアンスリスクとなります。

⑤ 特定行政書士の業務範囲の拡大

特定行政書士とは、行政書士が作成した書類にかかる行政不服申立てについて代理権を持つ、2014年に創設された資格です。

改正前は「行政書士自身が作成した書類」に限って不服申立ての代理が可能でした。
改正後は「行政書士が作成できる書類であれば、実際に作成していなくても不服申立ての代理が可能」となりました。
つまり、許認可申請をご自身で行ったあとに処分結果に不服がある場合でも、特定行政書士に代理を依頼できる場面が広がったことになります。

中小企業経営者が今すぐ確認すべきこと

補助金・許認可の「依頼先」を見直す

今回の法改正を受けて、補助金申請や許認可手続きを依頼している先が「行政書士または行政書士法人」であるかどうかを確認することをおすすめします。

以下のような場合は、法的リスクがあると考えられます。

  • 行政書士でないコンサルタント会社が「補助金申請サポート」として書類を作成している
  • 税理士・中小企業診断士などの他士業が報酬を得て補助金申請書類を作成している
  • 自動車販売店や建設コンサルタントが「諸費用」の中に申請書類の作成を含めている

これらのケースは、依頼する経営者側が意図していなくとも、業者側が行政書士法違反となる可能性があります。(その影響で、不採択になる可能性があります)

契約内容や実際の業務範囲を一度見直しておくことが重要です。

行政書士との顧問契約を検討する

許認可の更新・補助金の継続活用・外国人雇用など、定期的に行政手続きが発生する事業者の場合、行政書士との顧問契約を検討する価値があります。

問題が起きてから対処するよりも、専門家が事前にリスクを把握・管理する「予防法務」の観点から、顧問行政書士を持つ企業が増えています。

まとめ

2026年1月に施行された行政書士法改正は、「行政書士の使命・職責の明確化」「業務制限規定の整備」「両罰規定の強化」「特定行政書士の業務範囲拡大」の4点が主な柱です。

特に経営者として押さえておきたいのは、補助金申請や在留資格申請などの書類作成を「いかなる名目であっても」無資格者に有償で依頼することは法的リスクになるという点です。

信頼できる国家資格者である行政書士に依頼することが、適法かつ安全な手続きを進めるうえでの大前提となります。

今回の法改正を、行政手続きの依頼先や業務フローを見直す機会としてご活用ください。

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