「行政書士は飽和している」「仕事がなくなる資格だ」
——そんな言葉をインターネットで目にしたことがある方もいるかもしれません。
しかし、実際のデータを見るとまったく異なる景色が広がっています。

総務省統計局の経済センサス活動調査によれば、行政書士事務所全体の市場規模は2012年の308億円から2021年には622億円へと約2倍に拡大しました。
登録者数は増加しているにもかかわらず、1事務所あたりの売上も同期間で増加しています。つまり、行政書士の数以上に市場そのものが成長しているのです。

では、需要が特に伸びているのはどの分野でしょうか。
本記事では、2026年現在の市場動向をもとに、行政書士への需要が拡大している4つの分野を詳しく解説します。
中小企業の経営者にとっては、「どんな場面で行政書士を活用できるか」を知る機会として、ぜひ参考にしてください。

市場拡大の背景|需要が増え続ける理由

行政書士への需要が増え続けている背景には、大きく4つの社会変化があります。

行政手続きの複雑化
法改正・新制度の創設・電子申請の普及により、行政手続きの種類と複雑さは年々増しています。
自社で対応するには専門知識と時間が必要なため、専門家に委ねるニーズが高まっています。

企業のコンプライアンス意識の高まり
2026年1月施行の行政書士法改正で、無資格者による書類作成代行の禁止規定が明確化されました(出典:日本行政書士会連合会)。
法的リスクを避けるため、資格を持つ行政書士への依頼ニーズが増加しています。

補助金・助成金制度の多様化
国・自治体による補助金制度は年々多様化・複雑化しており、要件確認から事業計画書の作成・電子申請まで、専門家なしには対応が難しい場面が増えています。

グローバル化による外国人労働者の増加
日本で働く外国人が急増しており、在留資格申請など入管関連業務の需要が拡大しています。

需要拡大分野①|補助金申請サポート

補助金申請サポートは、近年行政書士の新たな主力業務として急速に拡大している分野です。

補助金市場の現状

ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・デジタル化・AI導入補助金など、中小企業向けの補助金制度は現在も多数運営されています。
2026年3月には中小企業庁がIT導入補助金を「デジタル化・AI導入補助金2026」に改称し、AIツール導入支援をさらに強化しました。
補助金制度そのものが広がり続けていることが、需要拡大の直接的な要因です。

行政書士に依頼するメリット

補助金申請において行政書士が担う主な業務は、申請要件の確認・事業計画書の作成支援・電子申請支援・採択後の交付申請・実績報告の対応などです。
特に事業計画書の作成は審査の合否を左右する最重要書類であり、審査ポイントを熟知した行政書士のサポートが採択率に大きく影響するとされています。

2026年1月施行の行政書士法改正により、補助金申請書類の作成・申請支援は行政書士の独占業務であることが改めて明確化されました。

これまでコンサルタント会社や中小企業診断士などが慣習的に担ってきた書類作成業務が法的リスクとなることから、行政書士への適法な依頼ニーズが一段と高まっています。

許認可と補助金のセット活用という視点

あまり知られていませんが、許認可申請と補助金申請を組み合わせた活用が、特に建設業・宅建業・サービス業の経営者にとって有効です。

たとえば建設業許可の取得に合わせて省人化・省力化補助金を活用して設備投資を行う、宅建業免許取得と同時期にIT導入補助金でシステム整備を行うといった組み合わせは、許認可と補助金の両方を扱う行政書士ならではの提案です。

許認可と補助金を別々に専門家に依頼するより、業務フロー全体を把握している行政書士がワンストップで対応する方が、手続きの抜け漏れが減り、タイミングを最適化しやすいという利点があります。

需要拡大分野②|建設業許可・宅建業免許などの許認可申請

行政書士の業務の中で、許認可申請は最も需要が安定している分野のひとつです。

建設業許可

建設業許可は軽微な工事(請負金額500万円未満など)を除いて、建設業を営む際に必要な許可です。
更新は5年ごとに必要なため、一度許可を取得した事業者との継続的な関係が生まれやすい分野でもあります。

また、建設業界の慢性的な人手不足を背景に、外国人技能実習生・特定技能人材の受け入れを検討する建設会社が増えています。

建設業許可の維持・更新と、外国人雇用に伴う在留資格申請の両方が必要になる案件は、行政書士にとってワンストップで対応できる強みを発揮できる分野です。

宅建業免許

不動産業を営む際に必要な宅建業免許も、行政書士が多く手がける許認可のひとつです。
事業拡大や新規参入に伴う新規申請・更新申請の需要が継続しています。

近年はITを活用した不動産業(オンライン内覧・電子契約)の普及に伴い、IT導入補助金との組み合わせ活用を相談するケースも見られます。

その他の許認可

行政書士が取り扱える許認可は1万種類以上とも言われています。
飲食店の食品衛生許可・介護事業所の指定申請・産業廃棄物処理業許可・古物商許可・民泊の住宅宿泊事業届出・ドローン飛行許可など、新たな事業形態の普及に伴い、取り扱う許認可の種類は増え続けています。

需要拡大分野③|外国人在留資格申請(入管業務)

外国人の在留資格申請は行政書士の独占業務であり、グローバル化の進展とともに需要が急拡大している分野です。

2026年現在、日本で働く外国人労働者は200万人を超え、過去最高を更新し続けています。
製造業・建設業・介護業・飲食業・IT業界など、幅広い分野で外国人材の採用が進んでいます。

在留資格の種類は「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」「経営・管理」など多岐にわたり、それぞれ取得条件や必要書類が異なります。
手続きの複雑さから、専門家である行政書士に依頼する企業が多く、「申請取次行政書士」の資格を持つ行政書士に依頼すれば申請者本人の出頭が免除されるメリットもあります。

2026年1月施行の行政書士法改正で業務制限の趣旨が明確化されたことにより、これまで「登録支援機関」や「採用エージェント」が兼ねていた在留申請書類の作成業務が法的リスクとなり、行政書士への適法な依頼に切り替える企業が増えています。

需要拡大分野④|相続・遺言関連業務

中小企業経営者にとっても無縁ではないのが、相続・遺言関連の業務です。

団塊の世代が後期高齢者を迎え、相続案件は急増しています。

遺言書の作成・遺産分割協議書の作成・相続人調査・法定相続情報証明制度の活用など、行政書士が関わる相続業務の需要は右肩上がりです。

特に中小企業の経営者にとっては、事業承継と相続が同時に発生するケースがあります。
会社の株式・事業用資産・許認可の承継など、事業と相続を一体的に処理できる行政書士の需要は今後さらに高まると考えられます。

まとめ|行政書士を「経営の伴走者」として活用する

2026年現在、行政書士への需要が特に拡大しているのは補助金申請サポート・許認可申請(建設業・宅建業など)・外国人在留資格申請・相続関連業務の4分野です。

いずれも共通しているのは、「専門知識と個別対応が不可欠」という点です。

書類を正確に作成するだけでなく、依頼者の事業状況・法令要件・行政の運用実態を踏まえた判断が必要とされる業務であり、これはAIや無資格者には代替できない領域です。

行政書士の活用は、「問題が起きてから依頼する」ではなく、「許認可・補助金・外国人雇用などを一体的に管理してもらう」という予防法務・経営支援の観点が有効です。
特に建設業・宅建業・サービス業を営む中小企業経営者の方は、ぜひ専門家への相談をご検討ください。

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