2026年、行政書士業界は大きな転換点を迎えています。
同年1月に数十年ぶりとなる行政書士法の改正が施行され、業界のルールが大きく塗り替えられました。
それと同時に、AIの実務活用・行政手続きのデジタル化・外国人労働者の増加・補助金需要の高止まりといった社会変化が重なり、行政書士に求められる役割そのものが変化しています。
「行政書士に頼もうか検討しているが、今の業界事情がよくわからない」「AIで書類作成が自動化されると聞いたが、実際のところどうなのか」
——そうした疑問をお持ちの中小企業経営者の方に向けて、本記事では2026年現在の行政書士業界動向を4つの視点から整理します。
2026年1月施行|行政書士法改正のポイント
2025年6月に「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)が成立し、2026年1月1日に施行されました(出典:日本行政書士会連合会)。
今回の改正は「数十年で最大規模」とも言われており、行政書士に業務を依頼する企業・事業者にとっても直接影響する内容を含んでいます。主な改正点は以下の4つです。
① 「使命」の明記と「職責」の新設
これまで行政書士法の第1条は「目的」を定める規定でしたが、改正により「行政書士の使命」を明記する規定へと改められました。
弁護士・司法書士・社労士など他士業には従来から使命の規定がありましたが、行政書士にはなかったことから、今回の改正は行政書士の社会的地位の明確化という点で大きな意味を持ちます(出典:伊藤塾コラム、2026年1月)。
あわせて、行政書士の「職責」規定が新設されました。その内容は「常に品位を保持し、業務に関する法令および実務に精通して、公正かつ誠実に業務を行わなければならない」というものです。
さらに、士業法としては初めて「デジタル社会への対応を努力義務として明記」しており、情報通信技術の活用を通じて国民の利便向上を図る責務が課されました(出典:日本行政書士会連合会 改正行政書士法について)。
② 業務制限規定の趣旨の明確化
改正後の第19条には、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。
これにより、「コンサル料」「事務手数料」「支援委託費」などの名目で行政書士以外の者が補助金申請書類や在留資格申請書類を作成する行為が、より明確に違法と位置づけられました。
特に補助金申請の分野では、コロナ禍以降「闇コンサル」と呼ばれる無資格業者が横行してきた経緯があります。
今回の改正は新たな禁止行為を創設したものではなく、従来から違法だった行為について明文化・整理したものですが、経営者が依頼先を選ぶ際の判断基準として重要な意味を持ちます。
③ 両罰規定の整備・強化
改正前の両罰規定は、調査記録簿に関する違反行為に限定されていました。
改正後は対象が大幅に拡大され、行政書士でない者が独占業務を行った場合・行政書士を名乗った場合・帳簿の保存義務を怠った場合なども両罰規定の対象となります。
両罰規定により、違反した従業員が所属する法人も罰金刑(100万円以下)の対象となるため、補助金コンサルタント会社や金融機関など、行政書士でない者が申請書類の作成を担っていた場合には深刻なコンプライアンスリスクが生じます。
④ 特定行政書士の業務範囲の拡大
特定行政書士とは、行政書士が作成した書類にかかる不服申立てについて代理権を持つ資格です。
改正前は「行政書士自身が作成した書類」に限って不服申立ての代理が可能でしたが、改正後は「行政書士が作成できる書類であれば、実際に作成していなくても不服申立ての代理が可能」となりました。
これにより、本人申請を行った後に処分に不服がある場合でも、特定行政書士に代理を依頼できる場面が広がります。
市場規模と登録者数|業界は拡大基調を維持
「行政書士は飽和している」「廃業率が高い」という声を耳にすることがありますが、データを確認すると実態は異なります。
総務省統計局の経済センサス活動調査によれば、行政書士事務所全体の市場規模は2012年の308億円から2021年には622億円へと約2倍に拡大しています。
1事務所あたりの売上も同期間で増加しており、単純に事業者数が増えているだけでなく、需要そのものが拡大していることがわかります(出典:総務省統計局 経済センサス活動調査)。
登録者数については、日本行政書士会連合会の統計によると2025年時点で54,261人に達しており(出典:月刊日本行政2026年2月号)、10年間で約1万2千人増加しました。
一方、2026年4月時点の廃業率は約3.5%で、他産業平均の3.9%を下回っています。
「廃業率が高い」という噂とは異なり、安定した業界構造が維持されていると考えられます。

AI・デジタル化と行政書士の関係
「AIが進化すれば行政書士は不要になるのではないか」という疑問は、経営者・行政書士双方から聞かれます。
2015年に野村総合研究所とオックスフォード大学が行った研究では「行政書士業務の多くはAIに代替可能」という結果が出たことも話題になりました。
しかし2026年現在の実態を見ると、AIが行政書士業務を全面代替しているという状況にはありません。
むしろ「なくなる業務」と「伸びる業務」が明確に分かれてきているというのが実情です。
AIが得意とするのはデータに基づく定型的な書類の初稿作成・情報整理・スケジュール管理といった反復作業です。
一方、依頼者の個別事情をヒアリングして最適な申請戦略を設計する業務、法改正への対応・最新通達の解釈・行政担当者との折衝といった業務は、現状のAIには代替できません。
また、今回の行政書士法改正で明文化された通り、官公署に提出する書類の作成と申請代行は行政書士の独占業務です。
AIがどれだけ進化しても、無資格者が報酬を得て申請代行を行うことは違法という法的枠組みは変わりません。
むしろ現場の行政書士にとって、AIは業務効率化のツールとして積極的に活用されはじめています。
業界ではAIに関する勉強会、講習会などが開かれており、行政書士のAI活用は日々前進しています。
その結果、定型的な文書作成の工数を削減することで、本来注力すべきコンサルティング・戦略立案の時間を増やすという活用が進んでいます。
今回の法改正で「デジタル社会への対応」が努力義務として明文化されたことも、こうした方向性を後押しするものといえます。
需要が拡大している3つの分野
2026年現在、行政書士への需要が特に高まっている分野があります。
補助金申請サポート
コロナ禍以降に急拡大した補助金支援業務は、2026年現在も高い需要を維持しています。
ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金に加え、2026年3月には中小企業庁がIT導入補助金を「デジタル化・AI導入補助金2026」に改称し、AIツール導入支援をさらに強化しました。
また、今回の行政書士法改正により、補助金申請書類の作成・申請代行は行政書士の独占業務であることが改めて明確化されました。
これまで慣習的に無資格のコンサルタント会社が担ってきた業務が法的リスクとなることから、適法な行政書士への依頼ニーズが高まっています。
建設業許可・宅建業免許などの許認可申請
建設業許可は5年ごとの更新が義務付けられており、継続的な需要が見込める安定分野です。
建設業界の人手不足による外国人技能実習生の増加も、関連業務の拡大につながっています。
宅建業免許をはじめとする各種許認可申請も、事業拡大・新規参入を検討する企業からの相談が絶えない分野です。
外国人在留資格申請(入管業務)
2026年現在、日本で働く外国人労働者は200万人を超え、過去最高を更新し続けています。
外国人の在留資格申請は行政書士の独占業務(弁護士も可能です)であり、グローバル化に伴う人材採用の多様化から、この分野の需要は今後も拡大が見込まれています。
まとめ|2026年の行政書士業界を一言で表すと
「変化の中で役割が拡大している」
——これが2026年現在の行政書士業界を表す言葉ではないでしょうか。
法改正によって独占業務の範囲がより明確になり、AIや行政手続きのデジタル化が進む中でも、行政書士が担う「申請戦略の設計」「依頼者との対話」「行政との折衝」という本質的な業務の重要性は変わっていません。
むしろ、AIやデジタルツールをうまく活用しながら、専門知識とコンサルティング力を兼ね備えた行政書士への需要は高まっていると考えられます。
中小企業の経営者にとっては、補助金・許認可・経営改善など、複数の場面で行政書士を「経営の伴走者」として活用できる環境が整いつつある時代と言えるでしょう。
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