結論:個人事業主でも建設業許可は取得できる

「法人でないと建設業許可は取れない」と思っていませんか?それは誤解です。

個人事業主(一人親方を含む)であっても、建設業許可の取得は可能です。
国土交通省の統計によると、許可取得事業者の約14%が個人事業主です。決して珍しいことではありません。

ただし、要件は法人と同じ水準が求められます。
「個人だから簡単」ということはありません。
この記事では、個人事業主が建設業許可を取得するための要件・手続きの流れ・法人との違いを実務の観点から解説します。

そもそも建設業許可が必要なケースとは?

建設業許可が必要になるのは、次の規模を超える工事を請け負う場合です。

工事の種類許可が必要になる金額
建築一式工事請負代金1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅
建築一式工事以外(専門工事)請負代金500万円以上

個人事業主が許可取得を検討するきっかけとして多いのは次の3パターンです。

  • 元請業者から取得を求められた(「許可のない業者には発注できない」)
  • 500万円以上の案件が入った、または今後入りそう
  • 信頼性・競争力を高めたい(許可番号があると取引先の安心感が違う)

個人事業主が満たすべき5つの要件

① 経営業務の管理責任者(経管)

建設業を適切に経営できる経験者が常勤していることが必要です。
個人事業主の場合、原則として本人が経管に該当します。

必要な経験年数は次のとおりです。

経験の内容必要年数
許可を受けたい業種での経営経験5年以上
許可業種以外の建設業での経営経験6年以上

ポイントは、個人事業主として自営した期間も経験年数にカウントできることです。

たとえば「建設会社で3年役員+個人事業主として2年」の合算でも、要件を満たせる場合があります(ただし確認書類の準備が重要)。

法改正の注意点: 以前は「許可を取りたい業種での経験」が必要でしたが、現在は許可業種以外の建設業経験でも要件を満たせるよう緩和されています。

② 専任技術者(専技)

営業所ごとに、建設工事の専門知識を持つ技術者が常勤していることが必要です。
個人事業主の場合、本人が専技を兼務するのが一般的です。

認められる要件は次のいずれかです。

  • 一定の国家資格(施工管理技士、建築士など)を保有
  • 指定学科卒業+3年または5年の実務経験
  • 実務経験10年以上(資格・学歴不問)

③ 財産的基礎

一般建設業許可の場合、以下のいずれかを満たすことが必要です。

  • 自己資本500万円以上(直前決算の純資産)
  • 500万円以上の資金調達能力(預金残高証明書などで証明)

個人事業主の場合、確定申告書の貸借対照表(事業用の純資産)で判断されます。
自己資本が不足している場合でも、預金通帳の残高証明(申請直前のもの)で対応できます。

④ 誠実性

請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと(建設業法第7条第3号)。

⑤ 欠格要件に該当しないこと

禁錮以上の刑を受けてから5年未満、暴力団関係者、過去に不正手段で許可を受けたケースなどは許可を受けられません。

個人事業主と法人の比較:何が違うのか?

比較項目個人事業主法人
申請先都道府県知事(1都道府県のみ)知事または大臣
財産要件個人の純資産で判断法人の資本金・純資産で判断
経管の要件原則、個人事業主本人常勤役員が対象
決算書の様式個人用(収支計算書など)法人用(貸借対照表等)
許可の承継原則できない(★例外あり)合併・分割で承継可能
社会保険任意加入(従業員5名未満)強制加入
信用・対外的印象やや弱い強い

★ 建設業法改正により、個人事業主が法人成りする際に事業承継の事前認可を取得していれば、許可を引き継ぐことが可能になりました。(ただし、かなり複雑な手続きがあります)

個人で取るか、法人化してから取るか?

これが実務上、最も多い相談テーマです。判断の目安は次の通りです。

個人事業主のまま許可を取るべきケース

  • 法人化の予定がない(少なくとも2〜3年先まで)
  • 早急に受注案件が控えており、今すぐ許可が必要
  • 規模が小さく、法人の維持コストが見合わない

先に法人化してから許可を取るべきケース

  • 近い将来に法人化を考えている
  • 個人→法人の引き継ぎ手続きを省略したい
  • 法人化のほうが節税メリットがある状況
📌 改正点

令和2年10月の法改正前は、個人で取った許可を法人に引き継ぐことができず、法人化した後に許可を「新規取得」し直す必要があり、その間に無許可期間が発生していました。
現在は事前承継認可制度で解消できますが、手続きのタイミングは行政書士に相談することをお勧めします。

個人事業主が申請で引っかかるポイント

1. 経験年数の証明書類が揃わない

税務署への開業届、確定申告書(収支内訳書)、請負契約書、注文書・請書などの書類が必要です。
特に古い書類が手元にない場合は、早めに整理・収集が必要です。

2. 専任技術者の「常勤性」の確認

健康保険証、確定申告書(本人の所得が記載されているもの)などで常勤を証明します。
他に本業があるとみなされると専技として認められません。

3. 自宅兼事務所の場合の営業所要件

居住部分と事業用スペースが明確に区分されていることが求められます。
自宅を営業所とする場合、間仕切り・看板・事務用品の配置などを整える必要があります。

まとめ

ポイント内容
個人でも取得できる?できる。一人親方でもOK
要件は法人と違う?基本的に同じ。緩和はない
経管は誰がなる?原則、個人事業主本人
財産要件は?自己資本500万円 or 預金残高証明
法人化との関係は?承継認可制度で引き継ぎ可能(要事前手続き)
最大の注意点は?経験証明書類の収集が複雑

個人事業主の建設業許可は、「取れる」かどうかよりも「どう証明するか」が重要、キモです。
特に経管の経験年数証明と書類収集は、早めに専門家に相談することでスムーズになります。

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