「うちは500万円未満の工事しかやっていないから許可はいらない」
——そう思っている建設業者の方は少なくありません。
しかし、この判断が思わぬ落とし穴になるケースが現場では頻繁に起きています。

建設業許可が必要かどうかを正しく判断するには、「500万円ルール」の正確な理解が不可欠です。
材料費の扱い・分割契約・建築一式工事の特例など、誤解しやすいポイントを知らないまま工事を受注すると、建設業法違反(最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金)となるリスクがあります。

本記事では、建設業許可の基本から「500万円ルール」の正確な判断基準、取得要件まで、行政書士が実務の視点でわかりやすく解説します。

1.建設業許可とは?制度の目的と概要

建設業許可とは、建設業法第3条に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負うために国土交通大臣または都道府県知事から受ける許可のことです。

この制度の目的は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発展を促進することにあります。
技術力や経営基盤のない業者が大規模な工事を受注し、工事が途中で止まってしまうといったトラブルを防ぐための重要な仕組みです。

建設業許可は業種ごとに取得するもので、土木工事・建築工事・大工工事・左官工事・電気工事など全29業種に分類されています。
自社が請け負う工事の種類に対応した業種の許可を取得する必要があります。

📌 知事許可と大臣許可の違い

営業所が1つの都道府県のみにある場合は都道府県知事の許可、2つ以上の都道府県に営業所がある場合は国土交通大臣の許可が必要です。
東京都内のみで営業している場合は東京都知事許可となります。

2.「500万円ルール」を正しく理解する

建設業許可が必要かどうかの基本的な判断基準が「500万円ルール」です。
建設業法では、軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可が不要とされており、その「軽微」の基準が500万円です(建設業法第3条・建設業法施行令第1条の2)。

無許可で受注すると建設業法違反 ⇒罰則あり(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)

建築一式工事は基準が異なる

建築一式工事(元請として総合的に建物を建設する工事)については、500万円ではなく異なる基準が設けられています。

  • 1件の請負代金が税込1,500万円未満の工事
  • または、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

上記のいずれかに該当する場合のみ、建築一式工事の許可なしに受注できます。
これらを超える規模の新築・増改築工事を元請として請け負う場合は、建築工事業の許可が必要です。

「税込500万円」の計算に含まれるもの

500万円の判断は、契約書の金額だけでは判断できません。
発注者が支給する材料の費用も工事代金に含めて計算する必要があります。
たとえば、工事代金400万円であっても、発注者から150万円分の材料を支給される場合は合計550万円となり、許可が必要な工事と判断されます。

3.「500万円未満だから許可不要」の落とし穴

現場でよく起こるのが、「それぞれの契約は500万円未満だから問題ない」という誤った判断です。
このように考え、請求書を分割している事業者様がかなりの割合でいます。(もちろん、違法です)

建設業法では、実質的に一つの工事と判断される場合は、複数の契約金額を合算して許可の要否を判断します(建設業法施行令第1条の2第2項)。

📌 違法となる「分割契約」の例

例① 同じ建物の基礎工事(280万円)と上物工事(350万円)を別契約にする
 → 合計630万円。一連の工事とみなされ、無許可営業と判断されるリスクがあります。

例② 同一の施主から1階内装(240万円)・2階内装(280万円)を時期をずらして受注する
 → 施工場所・時期・内容の関連性から合算される可能性があります。

重要:許可取得を回避する目的での意図的な分割は建設業法で明確に禁止されています。

「500万円未満でも許可を取得すべき」理由

現在は500万円未満の工事しか請け負っていない場合でも、建設業許可の取得を検討すべきケースがあります。

  • 元請業者から「許可がないと発注できない」と言われるケースが増えている
  • 公共工事の入札に参加するには許可取得が前提条件となっている
  • 許可を持つことで取引先・金融機関からの信用・信頼が向上する
  • 事業拡大で500万円以上の工事を受注したいときにすぐ対応できる

「まだ許可は不要かな」と思っているうちに大型案件の話が来て、慌てて申請するケースは少なくありません。
建設業許可の申請から取得まで、標準的に1〜3か月程度かかります。
余裕をもって準備を進めることが重要です。

4.一般建設業許可と特定建設業許可の違い

建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2種類があります。
多くの中小建設業者が取得するのは一般建設業許可ですが、元請として大規模工事を下請けに発注する場合は特定建設業許可が必要になります。

項目一般建設業許可特定建設業許可
対象下請への発注が基準額未満の工事元請として下請に税込5,000万円以上発注する工事(建築一式は8,000万円以上)
財産要件自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上
技術者要件一定の国家資格または実務経験1級施工管理技士などより高い資格要件
こんな業者向け一般的な中小建設業者のほとんど大規模工事を元請として受注する業者
📌 2025年2月の法改正に注意

令和7年(2025年)2月1日の建設業法改正により、特定建設業許可が必要となる下請発注金額の基準が引き上げられました。
建築一式工事以外は従来の4,500万円から税込5,000万円以上に、建築一式工事は7,000万円から税込8,000万円以上に変更されています。

5.建設業許可を取得するための5つの要件

建設業許可(一般建設業)を取得するには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります(建設業法第7条・第8条)。

  • 要件1:経営業務の管理責任者がいること
    建設業に関する5年以上の経営経験(役員・事業主)を持つ者が常勤で在籍していること。
    この要件が満たせず許可取得を断念するケースが多い要件の一つです。
  • 要件2:営業所ごとに専任技術者がいること
    請け負う業種に応じた国家資格(施工管理技士・建築士など)を持つか、または10年以上の実務経験を持つ者が常勤で在籍していること。
    資格がなくても実務経験で対応できますが、10年分の証明書類(請求書・通帳など)の準備が必要です。
  • 要件3:誠実性があること
    請負契約の締結や履行に際して、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと。
    法人の役員が刑事罰を受けていないかなども審査されます。
  • 要件4:財産的基礎があること
    自己資本が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力(預金残高証明書などで証明)があること。
    申請直前の残高証明書で確認されます。
  • 要件5:欠格要件に該当しないこと
    禁固以上の刑を受けてから5年を経過していない者、建設業法・暴力団関係法令等に違反して罰金刑に処せられてから5年を経過していない者などは許可を受けられません。
📌 社会保険加入も必須

上記5要件に加え、法人・個人を問わず、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適正な加入が許可取得の条件となっています(平成29年以降厳格化)。
加入していない場合は申請前に手続きが必要です。

実務経験10年の証明は特に難関

国家資格を持たない場合、「専任技術者の実務経験10年証明」が最も難しい要件です。

10年分の請求書・通帳・工事台帳などを月ごとに証明する必要があり、書類の量は数百枚に及ぶことも珍しくありません。
よく申請先の庁舎にキャリケースで書類を持ち込む光景を見かけますが、この10年証明の場合です。

当事務所では、このような難解な案件も数多く対応してきた実績があります。

6.許可を取得するメリット

建設業許可の取得は、単に「500万円以上の工事ができる」というだけではありません。
事業拡大・信用向上・リスク回避の面でも大きなメリットがあります。

  • 受注の幅が広がる——500万円以上の工事や公共工事の入札に参加できるようになります
  • 取引先・金融機関からの信頼が上がる——許可業者であることが信用の証明となり、元請から発注を受けやすくなります
  • 法令違反リスクがなくなる——知らないうちに500万円を超えた工事を受注していたという違反リスクがなくなります
  • 事業承継がスムーズになる——現在の許可制度では、事前認可を受けることで許可の空白期間なく承継できます
  • 経営事項審査(経審)を受けられる——公共工事の入札参加には経審が必要で、許可取得が前提です

まとめ

  • 建設業許可は一定規模以上の工事を請け負うために必要な法律上の許可です(建設業法第3条)
  • 「500万円ルール」は専門工事の基準。建築一式工事は1,500万円未満(または150㎡未満の木造住宅)が許可不要の基準です
  • 発注者支給の材料費も含めて500万円を判断します。分割契約による回避は建設業法違反です
  • 許可には「一般」と「特定」の2種類があり、元請として下請に5,000万円以上発注する場合は特定が必要です(令和7年2月改正後)
  • 取得要件は①経営管理責任者 ②専任技術者 ③誠実性 ④財産的基礎 ⑤欠格要件非該当 の5つ+社会保険加入
  • 申請から取得まで1〜3か月かかるため、早めの準備が重要です