許可取得の最大のハードル「経管(ケーカン)」を徹底解説。
4つの要件パターン・常勤性の落とし穴・令和2年法改正の緩和内容まで行政書士が実務視点で解説します。

建設業許可申請で最も多く「要件を満たせない」と断念されるのが、「経営業務管理責任者(ケーカン)」の要件です。

「うちの会社には社長しかいないが、建設業の経営経験が5年に届かない」「前の会社での役員経験を使いたいが証明できるか不安」
——現場ではこのような相談が後を絶ちません。

本記事では、経営業務管理責任者(常勤役員等)の4つの要件パターン・常勤性の判断基準・令和2年法改正による緩和内容・よくある失敗事例と対策を、行政書士の実務視点でわかりやすく解説します。

1.「経営業務管理責任者(常勤役員等)」とは何か

経営業務管理責任者(以下「経管」または「常勤役員等」)とは、建設業に関して対外的・対内的に責任を持つ立場で、経営業務を総合的に管理・執行した経験を持つ者のことです(建設業法施行規則第7条第1号)。

法人の場合は常勤役員のうち1名が、個人事業主の場合は本人または支配人が、この要件を満たしていることが許可取得の絶対条件です。
この要件が満たせなければ、他の要件がどれだけ揃っていても建設業許可を申請することはできません。

業界では「ケーカン」と略されることが多く、建設業許可申請の中で最も多く「壁」となる要件として知られています。

📌 経管は「建設業許可の顔」

経管は許可申請時だけでなく、許可を継続する限り常に在籍していることが必要です。
経管が退職・死亡などで不在になった場合は、発生後2週間以内に変更届を提出しなければなりません。
不在状態が続くと許可の取消しにもつながりますので、日頃から後継候補者を育てておくことが重要です。

2.要件を満たす4つのパターン

経管(常勤役員等)の要件を満たす方法には、建設業法施行規則に定められた以下の4パターンがあります。
自社の状況に合わせて最適なパターンを選択します。

★ 最も一般的(最多)
パターンA 建設業に関し5年以上の経営経験がある者

建設業の役員等(取締役・執行役・個人事業主・支配人・支店長・営業所長など)して5年以上の経験がある場合。
最もシンプルで多くの中小建設業者が該当します。
許可業種を問わず、建設業としての経営経験であればOKです。
経験は連続していなくても、飛び飛びでも合算が認められます。

比較的使いやすい
パターンB 建設業に関し5年以上、権限委任を受けた経営管理責任者準ずる地位での経験がある者

取締役会の決により代表取締役から具体的な権限委任を受け、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を管理した経験がある場合。
委任の証明として取締役会議事録・執行役員規程・組織図などの提出が必要です。

要証明
パターンC 建設業に関し6年以上、経営管理責任者を補佐した経験がある者

経管の直下で6年以上、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある場合。
役員ではなく部長・課長クラスでの経験が該当することがあります。
ただし「補佐」の実態証明が難しく、証明書類の準備に手間がかかるケースが多いです。

要件が複雑
パターンD 「補佐体制(組織的な経営管理)」による要件充足

経管個人の経験が不足していても、常勤役員等+直接補佐する者の体制で組織全体として要件を満たす方法です。
詳細は次のセクションで解説します。

📌 複数業種の経験は合算できる

パターンAの「5年以上の経営経験」は、異なる建設工事業種の経験を合算してカウントできます
たとえば大工工事業の取締役を3年・塗装工事業の個人事業主を2年経験した場合、合計5年として認められます。
専任技術者の実務経験(業種ごとに10年必要)とは異なるルールです。

3.令和2年改正で生まれた「補佐体制」による緩和

経管の要件が「個人の経験」だけでなく「組織としての管理体制」でも満たせるよう緩和されました。
これがパターンDの「補佐体制」です。

常勤役員等(本人)の要件
①建設業2年以上の役員経験+役員等・管理職として通算5年以上
または
②建設業2年以上の役員経験+(建設業以外含む)役員等として通算5年以上

かつ

直接補佐する者(別に配置)
以下の3分野それぞれで5年以上の業務経験を持つ者(1人が複数分野を兼任可)
 財務管理、労務管理、業務運営 

この改正は、経営者が高齢化している中小建設業者で後継者に経営を引き継ぐ際の「足かせ」を緩和することを目的としています。
ただし実務上は、補佐する者の経験は原則として申請会社における経験が求められるため、新設法人や設立間もない会社では活用しにくい点があります。

📌 パターンDは万能ではない

補佐体制(パターンD)は、経営経験の浅いケースへの対応策として新設されましたが、財務・労務・業務運営それぞれの補佐者の経験証明が別途必要です。
一般的な中小零細企業では該当するケースが限られるため、まずパターンA〜Cで要件を満たせるか検討することをおすすめします。

4.「常勤性」の正しい理解と証明方法

経管の要件として「常勤であること」は絶対条件です。
ここで言う常勤とは、休祝日等を除き、毎日所定の時間中その職務に従事していることを意味します。
非常勤役員や週数日のみの勤務は認められません。

常勤性の証明に使う書類

  • 健康保険被保険者証のコピー(法人の場合、会社の健康保険に加入していることを確認)
  • 住民税特別徴収通知書(給与から天引きされていることの証明)
  • 標準報酬月額決定通知書(マイナ保険証移行後、保険証の代替証明として活用)
  • 個人事業主の場合:確定申告書+国民健康保険証のコピー

常勤性が否定されるケース

以下に該当する場合、常勤性が認められず経管として申請できません。事前に必ず確認してください。

①他社の経管・専任技術者に既になっている場合
他の建設業許可業者で経管または専任技術者として登録されている人は、別の会社では常勤とみなされません。

②勤務先から遠すぎる場所に居住している場合
居住地が営業所から通勤不可能な遠距離(目安として片道2時間以上など)にある場合、常勤性が疑われることがあります。

③他に本業がある場合
他社で常勤として勤務しながら、申請会社でも経管を兼任することは原則認められません。
ただし、グループ会社の代表取締役で共同代表の場合など、例外的に認められるケースもあります。

5.経営経験を証明する書類の全体像

経管の経営経験を証明するには、「現在の常勤性の証明」と「過去の経営経験の証明」の2種類の書類が必要です。

📁 現在の常勤性を証明する書類

  • マイナ保険証+資格情報(法人役員の場合)
    マイナ保険証への移行に伴い、標準報酬月額決定通知書での代替も増加中
  • 住民税特別徴収通知書
    給与天引きで納付されていることの証明として有効
  • 確定申告書のコピー(個人事業主の場合)

📁 過去の経営経験を証明する書類(自社・現在)

  • 法人の登記簿謄本(役員就任の期間・役職を確認)
    ★ 最も重要。役員としての在籍期間が明確に確認できる。
  • 確定申告書(決算書)5年分
    建設業として事業を行っていたことの証明
  • 工事請負契約書・注文書・請求書(建設業の実態証明)
  • 許可通知書のコピー(過去に許可を取得していた場合は経験証明が容易)

📁 前職(他社)での経営経験を証明する書類

  • 前職会社の登記簿謄本(在籍期間の役員記載を確認)
    ★ 退任後も法務局で取得可能。閉鎖謄本も有効。
  • 前職会社の確定申告書・決算書(5年分)
    前職会社から提供を受ける必要あり。廃業している場合は対応策を要相談
  • 健康保険証・厚生年金記録(在籍期間の常勤性証明)
  • 前職会社の工事実績書類(建設業の実態証明として)
📌 許可業者での経験は証明が楽になる

経営経験を積んだ会社が建設業許可を取得していた場合、その期間の許可通知書の写しを提出するだけで建設業としての実態を証明できます。
工事請負契約書や注文書の準備が不要になるため、証明作業が大幅に簡略化されます。
前職会社の許可の有無は公開情報(国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システム)でも確認できます。

6.よくある失敗事例5選と対処法

これまで対応してきた案件の中から、経管要件でつまずきやすいパターンを厳選してご紹介します。

  • 「もうすぐ5年になるから大丈夫」と申請したら差し戻された
    申請日時点で5年に1日でも足りなければ要件を満たしません。
    「あと3か月で5年になる」という状態での申請は受理されず、差し戻しとなります。
    ✅ 対処法:
    申請前に経験期間を正確に計算し、要件を満たした日以降に申請する。
    余裕を持って準備を進めること。
  • 前職の会社が廃業していて経営経験が証明できない
    前職の会社が廃業・倒産しており、決算書や工事実績書類の入手ができないケースです。
    建設業許可を持っていた会社であれば登記簿謄本+閉鎖謄本で役員在籍を確認でき、許可通知書の写しで実態証明が可能です。
    ✅ 対処法:
    法務局で閉鎖謄本を取得する。国土交通省の許可業者検索で許可の有無を確認する。
    実態証明の代替書類について申請先自治体に事前相談する。
  • 「監査役」の経験で申請しようとしたが認められなかった
    監査役は会社法上の役員ですが、建設業法では「役員等」に含まれません。
    経管の要件を満たす役職として認められないため、申請が却下されます。
    ✅ 対処法:
    監査役経験は使えません。取締役・執行役員・個人事業主などとしての経験を改めて確認する。
  • 他社で既に経管登録されており、常勤性が否定された
    他の建設業許可業者で経管に登録されている方を、別の会社でも経管として申請しようとしたケースです。
    二重登録は認められません。
    ✅ 対処法:
    他社の経管を退任してから申請する。
    または別の経管候補者を社内で探す。他社との兼任が必要な場合は、共同代表など例外的な形態の可能性を専門家に相談する。
  • 個人事業主から法人成りしたら経管の経験がリセットされた
    個人事業主として5年の建設業経験があっても、法人設立後は法人としての役員経験が新たに必要になります。
    法人成り直後は経管要件を満たせない場合があります。
    ✅ 対処法:
    個人事業主の経験は法人の取締役としての経験と合算してカウントできます。
    他に、法人成りでの事業承継手続きをすることが可能です。
    この手続きでは経管の証明が不要となりますので、必ず法人成りの前に行政書士に相談ください。

まとめ

  • 経営業務管理責任者(常勤役員等)は建設業許可取得・維持の最大のハードルで、業界では「ケーカン」と呼ばれます
  • 要件を満たす方法は4パターン。最も一般的なのは「建設業に関し5年以上の役員等としての経営経験(パターンA)」です
  • 令和2年の法改正で「補佐体制(パターンD)」が新設され、経験の浅い役員でも組織全体で要件を満たせるようになりました
  • 常勤性は絶対条件。他社の経管・専任技術者との兼任や、遠距離居住は常勤性を否定される原因になります
  • 前職での経験を使う場合、登記簿謄本・確定申告書・工事実績書類の収集が必要。廃業企業でも閉鎖謄本や許可通知書で対応できるケースがあります
  • 経管は許可取得後も常に在籍が必要。退任時は2週間以内の変更届が義務です

ご参考:建設業許可 × 補助金支援