免許を取った後が、実は本番です

宅建業免許の取得に向けて、要件確認・書類準備・申請手続きと、多くの手間と時間を費やしてきたことでしょう。
しかし、免許の取得はあくまでスタートラインです。

宅地建物取引業法(宅建業法)では、免許を受けた後も宅建業者が継続的に守るべき義務が多数定められています。
これらを怠った場合、指示処分・業務停止処分・免許取消といった行政処分の対象となるほか、罰則が科されるケースもあります。

特に開業直後は「免許さえ取れれば大丈夫」という気持ちから、開業後の義務に意識が向きにくいことがあります。
本記事では、宅建業者が開業後に必ず押さえておくべき主要な義務を、わかりやすく整理してお伝えします。

義務① 標識(宅地建物取引業者票)の掲示

義務の内容

宅建業者は、事務所およびその業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に「標識(宅地建物取引業者票)」を掲示しなければなりません(宅建業法第50条第1項)。

この標識は、その宅建業者が正式に免許を受けた業者であることを外部に示すための掲示物です。
事務所だけでなく、モデルルームや現地案内所など業務を行う場所にも掲示が必要です。

標識の規格と記載事項(2025年4月改正後)

標識の大きさは縦30cm以上・横35cm以上と定められています。
記載事項については、2025年(令和7年)4月1日施行の宅建業法施行規則改正により、以下のとおり変更されました。

項目改正前改正後(2025年4月~)
専任宅建士に関する記載専任の宅地建物取引士の氏名氏名の記載は不要。代わりに「専任の宅地建物取引士の人数」を記載
代表者に関する記載代表者の氏名「事務所の代表者氏名」 を明記(追加)
その他の記載事項免許証番号・有効期間・商号・本店所在地・従業者数変更なし

すでに旧様式の標識を掲示している場合は、新様式への更新が必要です。
専任宅建士の異動があった際も、その都度速やかに修正しなければなりません。

なお、2025年改正により、標識と報酬額表はデジタルサイネージ(電光掲示板)での掲示も認められるようになりました。(営業中は表示すること)

義務② 報酬額表の掲示

宅建業者は、事務所ごとに公衆の見やすい場所に「報酬額表」を掲示しなければなりません(宅建業法第46条第4項)。

報酬額表とは、国土交通大臣が定めた「受け取ることができる報酬の上限額」を記載した表のことです。
顧客が安心して取引できるよう、あらかじめ明示しておく義務があります。

報酬額表の掲示義務は事務所のみであり、案内所への掲示は不要です(標識とは異なります)。
報酬額表は掲示義務違反となると指示処分+罰則の対象となりますので、必ず事務所内の見えやすい場所に掲示してください。

義務③ 従業者証明書の携帯・提示

宅建業者は、従業者(代表者・役員を含む)に「従業者証明書」を携帯させなければなりません(宅建業法第48条第1項)。

取引の関係者から「従業者証明書を見せてください」と請求があった場合、従業者はその場で提示しなければなりません。
なお、宅建士証や従業者名簿で代用することは認められていません。

従業者証明書は、試用期間中の従業員であっても宅建業務に従事する場合は携帯させる必要があります。
採用のタイミングで速やかに発行することを忘れないようにしましょう。

義務④ 従業者名簿の備付け(2025年4月改正)

宅建業者は、事務所ごとに「従業者名簿」を備え、従業者の情報を記載しなければなりません(宅建業法第48条第3項)。

取引の関係者から請求があった場合は、その者に閲覧させる義務があります。

従業者名簿の記載事項

従業者のプライバシー保護の観点から、記載事項が一部変更されました。

項目改正前改正後
従業者の生年月日記載必要記載不要
従業者の性別記載必要記載不要
従業者の住所記載必要記載不要
氏名・主たる職務内容・宅建士か否かの別記載必要変更なし(引き続き必要)

名簿はパソコン等の電磁的方法での保存も認められています(必要に応じてすぐに印刷できる状態であることが条件)。
保存期間は、最終の記載をした日から10年間です。

義務⑤ 帳簿の備付け・保存

宅建業者は、事務所ごとに業務に関する「帳簿」を備え、取引があるたびに必要事項を記載しなければなりません(宅建業法第49条)。

帳簿の主な記載事項は以下のとおりです。

  • 取引年月日
  • 宅地・建物の所在・面積
  • 売買価格・賃料・報酬の額
  • 取引に関与した他の宅建業者の名称等

帳簿は事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後に一定期間保存する義務があります。

取引の種類保存期間
通常の取引(仲介・賃貸等)閉鎖後 5年間
宅建業者自らが売主となる新築住宅閉鎖後 10年間

帳簿もパソコン等の電磁的方法での保存が認められています。
記載はその都度行う必要があり、事業年度末にまとめて記載することは認められていません。

義務⑥ 名簿登載事項に変更が生じた場合の「変更届」

宅建業者は、免許申請書に記載した事項に変更が生じた場合、変更が生じた日から30日以内に免許権者(都道府県知事または国土交通大臣)に変更届を提出しなければなりません(宅建業法第9条)。

変更届が必要な主な事項は以下のとおりです。

  • 商号または名称の変更
  • 代表者・役員の変更
  • 事務所の所在地・名称の変更
  • 専任の宅地建物取引士の変更
  • 政令使用人の変更

30日以内という期限は厳守です。
登記が必要な変更(商号変更・本店移転等)は、「変更が生じた日」から30日以内の届出が必要であり、登記完了日からではない点に注意してください。

義務⑦ 専任の宅建士の人数確保

宅建業者は、事務所に成年者である専任の宅地建物取引士を一定数置かなければなりません(宅建業法第31条の3)。

場所必要な専任宅建士数
事務所業務に従事する者5名に対し1名以上
宅建士の設置義務がある案内所等1名以上

専任宅建士の人数が基準を下回った場合、2週間以内に補充等の措置を講じなければなりません。
その後、30日以内に免許権者に届出が必要です。

人員の退職・異動があった際は、すぐに対応を検討することが重要です。
措置を怠ると業務停止処分の対象となることもあります。


よくある見落とし・注意ポイント

✕ 「標識を一度作ったら変更しなくていい」

役員・専任宅建士の変更があった場合は、速やかに標識の記載内容を修正する必要があります。
古い情報のまま掲示し続けることは義務違反です。

✕ 「案内所にも報酬額表が必要だ」

報酬額表の掲示義務は事務所のみです。
案内所には不要ですが、標識(宅地建物取引業者票)は案内所にも掲示が必要です。
混同しないようにしましょう。

✕ 「帳簿は年度末にまとめて書けばいい」

帳簿は取引があるたびに記載する必要があります。まとめて記載することは認められていません。

✕ 「変更届は余裕があるときに出せばいい」

変更届の提出期限は変更が生じた日から30日以内です。
役員交代や事務所移転の際は、手続きの優先順位を高く設定してください。

まとめ:開業後の義務管理こそ、安定経営の土台です

宅建業者としての義務は、免許を取得した後も継続的に発生します。
標識掲示・帳簿管理・従業者名簿・変更届の期限管理──これらを日常業務の中に組み込んで管理することが、処分リスクを避けるための最善策です。

また、2025年4月の施行規則改正では、従業者名簿の記載事項や標識の様式が変更されています。
すでに開業している業者の方も、現在の掲示物・管理内容が最新の法令に対応しているかどうかを、この機会にぜひ確認してみてください。

「開業後の手続き管理が不安」「変更届を出し忘れていないか確認したい」という方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
宅建業免許の取得から開業後の継続管理まで、一貫してサポートいたします。