宅建業免許を取ったら、次にやることがあります

宅建業免許を取得しただけでは、すぐに営業を開始することはできません。
免許取得後、必ず「保証金制度」の手続きを完了させてから、初めて宅地建物取引業を営むことができます。

この保証金制度とは、宅建業者が取引の相手方(一般消費者など)に損害を与えた場合に備えて、あらかじめ一定の金額を確保しておく仕組みです。
宅地建物取引業法(第25条)に基づく義務であり、この手続きを怠ったまま営業すると法令違反となります。

保証金制度には2つの方法があります。

  • 方法① 営業保証金を供託する(保証協会に加入しない場合)
  • 方法② 保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付する(保証協会に加入する場合)

どちらを選ぶかは宅建業者の任意ですが、初期コスト・手続き・メリット・デメリットに大きな違いがあります。

方法① 営業保証金とは

仕組み

営業保証金とは、宅建業者が直接、主たる事務所(本店)の最寄りの法務局(供託所)に供託する金銭等のことです。

宅建業者が取引によって相手方に損害を与えた場合、その相手方は供託所に還付請求をすることができます。これにより消費者が保護される仕組みです。

金額

事務所の種別供託金額
主たる事務所(本店)1,000万円
従たる事務所(支店)1カ所につき500万円

たとえば、本店1カ所のみで開業する場合は1,000万円の供託が必要です。
本店+支店2カ所の場合は、1,000万円+500万円×2=2,000万円となります。

供託の方法

金銭(現金)だけでなく、国債証券・地方債証券・政府保証債証券などの有価証券でも供託することができます。
ただし有価証券の評価額には割引が適用されます(国債は額面の100%、地方債・政府保証債は90%)。

営業保証金のポイント

  • 供託後、免許権者(知事または国土交通大臣)に届け出ることで、初めて営業開始が可能になります
  • 支店すべての分も、本店の最寄りの供託所にまとめて供託します
  • 廃業・免許失効などの際には、官報への公告手続きを経て取り戻すことができます

方法② 弁済業務保証金(保証協会加入)とは

仕組み

保証協会に加入した場合、宅建業者は「弁済業務保証金分担金」を保証協会に納付します。
保証協会がその分担金を受け取った後、1週間以内に供託所に「弁済業務保証金」を供託する仕組みです。

つまり、宅建業者と供託所の間に「保証協会」が仲介に入る団体保証の制度です。
複数の宅建業者が集まって分担する仕組みであるため、個々の負担額が大幅に抑えられています。

保証協会とは

保証協会とは、宅建業者だけを会員(社員)とする、国土交通大臣が指定した団体です。
現在、全国に2つの保証協会があります。

  • 全国宅地建物取引業保証協会(通称「ハト」)
  • 不動産保証協会(通称「ウサギ」)

どちらに加入するかも任意です。なお、2つの協会に同時に加入することはできません。

金額

事務所の種別分担金額
主たる事務所(本店)60万円
従たる事務所(支店)1カ所につき30万円

本店1カ所のみの場合は60万円の納付で済みます。
本店+支店2カ所の場合は60万円+30万円×2=120万円です。

弁済業務保証金のポイント

  • 分担金は金銭のみでの納付が必要で、有価証券での納付はできません
  • 保証協会の社員になる前の取引相手も、弁済業務保証金から還付を受けることができます
  • 退会・廃業時には、官報への公告手続きの後に分担金が返還されます

2つの制度を比較する

比較項目営業保証金弁済業務保証金(保証協会加入)
供託者宅建業者(直接)保証協会(代わりに供託)
納付先本店最寄りの供託所保証協会
本店の金額1,000万円60万円
支店1カ所の金額500万円30万円
納付方法金銭または有価証券金銭のみ
初期コストの負担非常に大きい小さい
保証協会への加入費不要必要(入会金・年会費等)
還付の仕組み供託所に直接請求保証協会の認証後、供託所に請求
廃業時の取戻し官報公告後に取戻し官報公告後に返還

どちらを選ぶべきか?──実務的な判断基準

ほとんどの事業者は保証協会加入(弁済業務保証金)を選びます

基本的には弁済業務保証金分担金を選択するケースが多く、何らかの理由で保証協会に加入できない場合に高額な営業保証金を支払うことになります。

その主な理由は、初期費用の差が非常に大きいからです。
本店1カ所で比較すると、営業保証金は1,000万円、弁済業務保証金分担金は60万円と、約17分の1の負担で済みます。
開業時のキャッシュフローを考えると、保証協会加入が圧倒的に有利です。

営業保証金を選ぶケースとは

一方で、以下のような事情がある場合には、営業保証金の供託を選択することもあります。

  • 保証協会の審査に通らない、または加入が難しい事情がある場合
  • 大口の取引が多く、還付リスクへの対応を自社で完結させたい場合
  • 将来的に支店を多数展開する計画があり、分担金の累積より供託一本化の方がシンプルになる場合

保証協会加入時の注意点

保証協会に加入する際は、分担金(60万円〜)のほかに、入会金・年会費・研修費用なども発生します
協会ごとに費用体系が異なりますので、加入前に各協会に直接確認することをお勧めします。

また、保証協会加入後に新たに支店を設置した場合は、設置日から2週間以内に追加の弁済業務保証金分担金を保証協会に納付する必要があります。
期限を過ぎると社員の地位を失うリスクもありますので、支店開設のスケジュール管理には十分注意が必要です。

手続きの流れ

営業保証金を選ぶ場合

  1. 本店最寄りの供託所に営業保証金を供託する
  2. 免許権者(都道府県知事または国土交通大臣)に供託した旨を届け出る
  3. 届出後、営業開始が可能になる

保証協会加入を選ぶ場合

  1. 保証協会に入会申請・審査を受ける
  2. 承認後、弁済業務保証金分担金を保証協会に納付する
  3. 保証協会が1週間以内に供託所に弁済業務保証金を供託する
  4. 保証協会から免許権者に届出が行われる
  5. 届出後、営業開始が可能になる

まとめ:まずは保証協会加入をベースに

宅建業を開業する際の保証金制度は、ほとんどの場合、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納める方法が現実的な選択肢です。
初期費用を大幅に抑えられるだけでなく、保証協会が提供する研修・サポートや業界ネットワークへのアクセスというメリットも得られます。

ただし、保証協会への加入審査や入会手続きには一定の時間がかかります。
宅建業免許の取得後、できるだけ早めに保証協会への加入手続きを進めることが、スムーズな開業への近道です。

「宅建業免許の取得から保証金手続きまで、まとめてサポートしてほしい」とお考えの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
免許申請から保証協会加入の段取りまで、手続き全体をワンストップで対応いたします。