宅建業免許を取得・維持するために必須となる「専任の宅地建物取引士」。
しかし、「常勤性」「専従性」の要件が曖昧で、実務上どこまでが認められるのか判断に迷うケースが多くあります。

特に近年は、副業・テレワークの普及により、「他社の仕事と兼務できるのか」「週3日勤務でも専任性は認められるのか」といった相談が増えています。

この記事では、専任の宅地建物取引士の要件を実務的に徹底解説し、NG例や名義貸しにならないための実務ポイントをまとめました。

目次
  1. 専任の宅地建物取引士とは?
    1. 設置義務の基本
    2. 専任の宅地建物取引士と一般の宅地建物取引士の違い
  2. 専任性の2つの要件を完全理解
    1. 要件① 常勤性(事務所に常勤していること)
      1. 常勤性の定義
      2. ✅ 常勤性が認められるケース
      3. ❌ 常勤性が認められないケース
      4. 【重要】通勤時間の基準
    2. 要件② 専従性(専ら宅建業に従事していること)
      1. 専従性の定義
      2. ❌ 専従性が認められないケース
      3. 【重要】2025年東京都の副業ルール変更
  3. 他士業との兼業は認められるか?
    1. 原則:専従性が認められない
    2. 例外:同一法人・同一場所での兼務
  4. 【実務】よくある質問とNG例
    1. Q1. 複数の会社の代表取締役を兼務できるか?
      1. 東京都・神奈川県:原則NG
      2. 埼玉県:条件付きでOK
    2. Q2. テレワークで専任性は認められるか?
      1. 原則:認められる(条件付き)
      2. NG例
    3. Q3. 週3日勤務でも専任性は認められるか?
      1. 原則:NG
  5. 名義貸しとは?罰則を理解する
    1. 名義貸しの定義
      1. 名義貸しに該当するケース
    2. 名義貸しの罰則
      1. 宅建士側の罰則
      2. 宅建業者側の罰則
    3. 【重要】最高裁判例:名義貸しの利益分配は無効
  6. 名義貸しにならないための実務チェックリスト
    1. □ 常勤性のチェック
    2. □ 専従性のチェック
    3. □ 資格登録簿のチェック
    4. □ 行政庁への届出
  7. まとめ|専任性を確実にクリアするために
    1. 常勤性のポイント
    2. 専従性のポイント
    3. 名義貸しを避けるために

専任の宅地建物取引士とは?

設置義務の基本

宅建業法では、事務所等に一定数以上の成年者である宅地建物取引士の設置を義務付けています。
1つの事務所に「宅地建物取引業に従事する者」5名につき1名以上の設置を義務付けています。

事務所の種類必要人数
本店・支店業務従事者5人につき1人以上
案内所(契約締結あり)1人以上
案内所(案内のみ)不要

専任の宅地建物取引士と一般の宅地建物取引士の違い

業務内容に違いはありません。重要事項説明や契約書への記名押印など、宅建士としての業務は同じです。

唯一の違いは、「当該事務所に常勤」する「常勤性」と「専ら宅建業に従事」する「専従性」の2つの要件を満たす必要があることです。

専任性の2つの要件を完全理解

専任の宅地建物取引士として認められるためには、「常勤性」と「専従性」の両方を満たす必要があります。

要件① 常勤性(事務所に常勤していること)

常勤性の定義

常時勤務とは、宅地建物取引士と宅建業者との間に雇用契約等の継続的な関係があり、当該事務所等の業務時間に当該事務所等の業務に従事することを要します。

具体的には

  • 宅建業者の通常の勤務時間に勤務している
  • 継続的な雇用関係がある(正社員・契約社員など)
  • その事務所で実際に勤務している

✅ 常勤性が認められるケース

ケース判断備考
正社員として通常勤務✅ OK最も一般的なパターン
契約社員(フルタイム)✅ OK継続的雇用関係があればOK
代表取締役・常勤役員✅ OKその会社のみに常勤している場合
パート(週5日・フルタイム相当)△ 要確認自治体により判断が異なる

❌ 常勤性が認められないケース

ケース理由
他社の代表取締役他社での常勤が求められるため
他社の常勤役員他社での常勤が求められるため
他社の正社員他社での常勤が求められるため
通勤時間が片道2時間以上通常の通勤が不可能とみなされる
非常勤・パートタイム通常の勤務時間に勤務していない
勤務先からの退社後の勤務本業の勤務時間外のため

専任の宅地建物取引士は、宅建業を営む事務所に常勤・専従していなければなりません。
したがって、他社で代表取締役・常勤の役員・正社員となっている場合には、専任性を認めない行政庁が多いようです。

【重要】通勤時間の基準

遠方に居住しているために、事務所に通勤できないとみられる場合にも常勤性は認められません。
通勤時間の目安は、おおむね1時間半から2時間程度とされることが多いようです。

実務上の注意点

  • 住民票上の住所で判断される
  • 実際は東京に住んでいても、住民票が地方のままだと認められない可能性
  • 居所証明で対応できる場合もある

要件② 専従性(専ら宅建業に従事していること)

専従性の定義

宅地建物取引士は、専ら当該事務所等の宅地建物取引業に従事することが必要です。

「専ら」の意味

  • その事務所の宅建業務に専念していること
  • 他の業務を主たる業務としていないこと

❌ 専従性が認められないケース

ケース理由
監査役経営に直接関わらず、専従性なし
他士業との兼業(原則)宅建業に専念していない
他社での事業(主たる業務)専ら宅建業に従事していない
複数の宅建業者で専任兼務物理的に不可能

宅建業免許を申請する会社の監査役は、その申請する会社の専任の宅地建物取引士に就任することはできません。

【重要】2025年東京都の副業ルール変更

東京都では令和6年11月1日から、通常勤務時間外(夜間・休日)の副業は条件付きで認められるようになりました。

条件

  • 通常勤務時間は宅建業に専念している
  • 副業は宅建業の業務に支障をきたさない範囲
  • 宅建業者が副業を承認している

他士業との兼業は認められるか?

原則:専従性が認められない

「専従」にあたらない例として、司法書士・行政書士など他士業と兼業している場合があげられます(東京都の場合であり、他の道府県では認められる可能性があるものも含まれております)。

例外:同一法人・同一場所での兼務

大阪府の場合、同一法人(または同一個人業者)・同一場所(同一建物)で勤務する場合に限り、個々のケースで、勤務実態、業務量を斟酌し常勤性・専任性に問題がないと判断できる場合には、兼務を認めることがあります。

認められる可能性があるケース

  • ✅ 建設業許可の経営業務の管理責任者(同一法人・同一事務所)
  • ✅ 建設業許可の専任技術者(同一法人・同一事務所)
  • △ 行政書士・司法書士(業務量により判断)

自治体によって判断が異なるため、事前確認が必須です。

【実務】よくある質問とNG例

Q1. 複数の会社の代表取締役を兼務できるか?

東京都・神奈川県:原則NG

他社の代表取締役を兼務している場合、常勤性が認められません。

埼玉県:条件付きでOK

埼玉県の場合は、複数の会社の代表取締役や代表社員を兼任していても、当該会社で実質的に非常勤であれば、非常勤証明書を添付することでの申請を認めいるようです。

実務ポイント

  • 申請する自治体の取扱いを事前に確認
  • 他県での申請も検討する

Q2. テレワークで専任性は認められるか?

原則:認められる(条件付き)

ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、宅地建物取引業者の事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合を含む。

条件

  • ✅ 通常の勤務時間に勤務している
  • ✅ ITで適切な業務体制が確保されている
  • ✅ あくまで「常勤できる専任取引士がテレワークを利用」している

NG例

テレワークを理由として遠隔地に住む方を専任取引士にすることは認められておりません。
あくまでも常勤できる専任取引士がテレワークを利用することが認められているに過ぎません。

Q3. 週3日勤務でも専任性は認められるか?

原則:NG

営業時間の一定時間に限られる非常勤やパートタイム従業員は、常勤性が認められないとされた事例があります。

例外

  • 会社の通常勤務時間が週3日の場合(特殊なケース)
  • 自治体により判断が異なるため要確認

名義貸しとは?罰則を理解する

名義貸しの定義

名義貸しとは、実際に勤務していない不動産会社に専任の宅地建物取引士として登録することです。

名義貸しに該当するケース

①勤務していない不動産会社に専任登録するケース以外に、②宅建免許を持たない人に名義を貸すケースも宅建士の名義貸しに該当します。

名義貸しのパターン具体例
①専任登録の名義貸し勤務していない会社に専任として登録
②資格の名義貸し無資格者に宅建士名義を貸す

名義貸しの罰則

宅建士側の罰則

宅地の名義貸しをすると、免許取り消しはもちろんのこと、3年以下の懲役または、100万円以下の罰金を科せられるリスクがあります。

違反内容罰則
名義貸しによる営業3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
名義貸しによる表示・広告100万円以下の罰金

宅建業者側の罰則

違反内容罰則
名義貸しを受けて営業3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
業務停止処分1年以内の業務停止
免許取消宅建業免許の取消

【重要】最高裁判例:名義貸しの利益分配は無効

無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者からその名義を借り、当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は、同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして、公序良俗に反し、無効であるというべきである。

実務上の意味

  • 名義貸しで利益を分配する契約は無効
  • 「報酬がもらえるから」という理由での名義貸しは絶対NG
  • 損害賠償責任も発生する可能性

名義貸しにならないための実務チェックリスト

□ 常勤性のチェック

  • [ ] 通常の勤務時間に事務所に勤務している
  • [ ] 雇用契約書・労働条件通知書がある
  • [ ] 通勤時間が片道2時間以内である
  • [ ] 住民票の住所が通勤可能な範囲である
  • [ ] 他社の代表取締役・常勤役員・正社員ではない
  • [ ] 実際に事務所で業務をしている(テレワークの場合も勤務実態あり)

□ 専従性のチェック

  • [ ] 専ら宅建業の業務に従事している
  • [ ] 監査役ではない
  • [ ] 複数の宅建業者で専任を兼務していない
  • [ ] 他の主たる業務(他士業など)がない
  • [ ] 副業をする場合は、通常勤務時間外のみ

□ 資格登録簿のチェック

  • [ ] 宅地建物取引士証の有効期限内である
  • [ ] 資格登録簿の「従事先」が空欄になっている(新規申請時)
  • [ ] 前職を退職した際、従事先変更登録を行った

以前の勤務先が、専任の宅地建物取引士の退任届または廃業届などを知事や大臣に提出したとしても、それによって宅地建物取引士資格登録簿の記載が変更されるわけではないため、このような問題が多々生じることになります。

□ 行政庁への届出

  • [ ] 就任時に「専任の宅地建物取引士変更届」を提出した
  • [ ] 宅建士本人が「従事先変更登録申請」を提出した
  • [ ] 退任時にも両方の届出を提出した

宅地建物取引士としての変更届は、専任の宅地建物取引士を退任(または会社自体を退職)するときと、新たに専任の宅地建物取引士に就任するときと、どちらも宅地建物取引士自身が行うことが原則となります(委任も可能)。この手続きは忘れてしまいがちなのでご注意ください。

まとめ|専任性を確実にクリアするために

専任の宅地建物取引士の要件は、「常勤性」と「専従性」の2つです。

常勤性のポイント

✅ 通常の勤務時間に事務所に勤務
✅ 継続的な雇用関係
✅ 通勤可能な距離に居住
❌ 他社の代表取締役・常勤役員・正社員との兼務は原則NG

専従性のポイント

✅ 専ら宅建業に従事
✅ テレワークは条件付きでOK
✅ 副業は通常勤務時間外なら条件付きでOK(東京都)
❌ 監査役は専従性なし
❌ 他士業との兼業は原則NG

名義貸しを避けるために

✅ 実際に勤務している事務所のみに専任登録
✅ 資格登録簿の従事先を必ず確認・変更
✅ 就任・退任時の届出を忘れずに
❌ 「報酬がもらえるから」という理由での名義貸しは絶対NG

以上