「在宅でもOK」の解釈が、免許違反を招くケースがある

テレワークの普及とともに、専任の宅地建物取引士(以下、専任宅建士)の「常勤性」をめぐる誤解が増えています。

「令和3年の法改正でテレワークが認められた」
──その情報を誤って解釈し、遠方在住の宅建士を専任に就任させている、あるいは出社実態がないまま専任として登録しているというケースが実務では散見されます。

テレワークの容認は、あくまで一定の要件を満たした上での話です。
要件を理解しないまま運用すると、宅建業法違反として行政指導・免許取消処分の対象になる可能性があります。

この記事では、専任宅建士に求められる「常勤性」と「専任性」の法的な意味、テレワークが認められる条件・NGとなるケースを、令和3年・令和6年の解釈・運用の改正も含めて整理します。

専任宅建士に求められる2つの要件

国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、専任宅建士の「専任」を次のように定義しています。

「専任」とは、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう)して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいう。」

国土交通省

ここで求められるのは、大きく2つの要件です。

要件意味
常勤性事務所の営業時間中、継続的に勤務していること
専任性(専従性)当該事務所の宅建業の業務に専ら従事していること

この両方を同時に満たしていないと、専任宅建士として認められません。
以下で、それぞれを詳しく見ていきます。

「常勤性」とは何か

常勤性とは、宅建業者との間に継続的な雇用契約等の関係があり、その事務所の営業時間中に当該事務所の業務に従事することです。

重要なのは、「雇用形態の種類」より「勤務実態」が問われるという点です。

常勤性が認められる(○)

  • 正規雇用(正社員)
  • 契約社員・派遣社員(業者が明確に指揮命令できる場合)
  • 法人の役員(代表取締役など)が常勤する場合

常勤性が認められない(×)──NG事例

営業時間の一定時間に限られる非常勤・パートタイム従業員や、勤務先から退社後や非番の日に勤務するケースは、常勤性が認められないとされています。

たまに見かけるのが、特に雇用契約を結ばず、単に資格手当などの名目で取引士と繋がっているケースです。 ←もちろんNGです。

その他のNG事例をまとめると以下のとおりです。

NG事例理由
アルバイト・パート(勤務時間が限定)営業時間を通じた常勤が担保されない
他社の常勤役員との兼任他社に常勤している以上、当事務所に常勤できない
監査役・非常勤役員実務に常時関与する立場ではない
遠方居住者(通勤が物理的に困難)常勤の前提となる通勤可能性がない

通勤時間の目安については、おおむね1時間半〜2時間程度とする自治体が多いようです。

「専任性」とは何か

専任性とは、当該事務所の宅建業務に専念することです。他の事業・他社の業務との兼業は原則として認められません。

専任性が認められない(×)──兼業NGの代表例

  • 他の宅建業者で専任宅建士として登録されている
  • 他の会社に雇用されており、そちらでも業務を行っている
  • 他法人の代表取締役・常勤役員を兼任している

ただし、同一事務所・同一法人内での兼業については、一定の例外が認められています。

例外的に認められる兼業

宅地建物取引業の業務が行われていない間、一時的に他の業種に従事することは認められています(事務所が兼業している場合など)。

具体的には、同一法人・同一事務所内で宅建業と他の業種(例:建設業、行政書士業など)を兼業している場合に、宅建業の業務がない時間帯に限り兼業業務に従事することが認められます。
ただし、同一建物・同一法人であることが前提となります。

令和3年7月改正:テレワーク(在宅勤務)が容認された

コロナ禍をきっかけに、令和3年7月、国土交通省は宅建業法の解釈・運用の考え方を改正しました。

「専任」とは、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいう。
ただし、ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、宅地建物取引業者の事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合を含む。

つまり、以下の2条件を満たせば在宅勤務(テレワーク)でも常勤性が認められるようになりました。

  1. ITの活用等により適切な業務ができる体制が確保されていること
  2. 通常の勤務時間を勤務していること

テレワーク容認の「誤解」に注意

この改正は、原則として事務所から通勤圏内に住んでいる人が専任宅建士として認められ、通勤圏内に住んでいるものの、ITを活用できる環境が整っていれば出社せずにテレワークを行っても良いという趣旨です。

したがって、「テレワークOKになったから、どこに住んでいてもいい」という解釈は誤りです。
遠方居住者をテレワークで専任に就任させることは認められません。

令和6年4月改正:他の事務所業務への一時従事も明確化

さらに令和6年4月1日施行の改正では、もう一歩踏み込んだ解釈の明確化が行われました。

「当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間に、ITの活用等により、同一の宅地建物取引業者の他の事務所に係る宅地建物取引業の業務に従事することは差し支えない」

これにより、同一業者の複数事務所を持つ宅建業者において、自分が専任として登録されている事務所の業務が一時的に発生していない間に限り、他の事務所の業務をITでサポートすることが認められるようになりました。

ただし、注意点として「この場合において、当該他の事務所における専任の宅地建物取引士を兼ねることができるわけではない」とされています。
つまり、あくまでサポート的関与であり、両拠点の専任を1人で兼ねることは不可です。

テレワーク運用における実務上の注意点

テレワークで専任宅建士が在宅勤務をする場合、「適切な業務体制」の証明が求められます。

適切な業務体制の確認として最も重要なのは、勤怠管理の情報やテレワークで作業を行ったり、連絡を取ったりしたことが分かるメール・書類などを保存することです。
テレワークの勤務実態の証拠となる客観的な資料を残しておく必要があり、実績が確認できない場合は行政による監督の対象になる可能性もあります。

実務チェックリスト(テレワーク運用時)

  • 勤怠管理システムによる出退勤記録の保存
  • 業務上のメール・チャット・書類の保存
  • ビデオ会議・連絡履歴の記録
  • 就業規則・テレワーク規程の整備
  • 自宅が事務所の通勤圏内であることの確認

常勤性・専任性に関するQ&A

Q1. アルバイトの宅建士を専任にできる?
基本的に不可。
アルバイトは宅建業に従事する者の人数カウントにも含まれず、営業時間全体をカバーする常勤実態が担保されないためです。
長期的には正規雇用が安全です。

Q2. 代表取締役が宅建士を兼ねる場合は?
代表取締役が当該事務所に常勤して宅建業務に専従している場合は可能です。
ただし、他社の常勤役員を兼任している場合は認められません。

Q3. 建設業の専任技術者と兼任できる?
同一法人・同一建物の場合、各都道府県への申立書提出等の手続きを経て、認められるケースがあります。
ただし都道府県によって運用が異なるため、必ず事前確認が必要です。

Q4. 産休・育休中の専任宅建士はどう扱う?
産休・育休中は「常勤」の要件を満たさないと判断される場合があります。
欠員が生じる前に代替の専任宅建士を手配するか、事前に行政庁へ相談することを強くお勧めします。

まとめ

  • 専任宅建士には「常勤性」と「専任性」の2要件が必要
  • 常勤性とは、営業時間中に継続的に勤務していること。パート・アルバイト・非常勤は原則NG
  • 令和3年7月改正により、ITを活用した体制整備を前提としたテレワーク(在宅勤務)が容認された
  • テレワークは通勤圏内に居住していることが前提。遠方在住者への適用は不可
  • 令和6年4月改正により、同一業者の他の事務所業務へのIT経由での一時的関与も明確化
  • テレワーク運用時は勤務実態を証明する記録の保存が必須
  • 都道府県ごとに運用に差があるため、判断に迷う場合は事前に行政庁へ確認することが重要

専任宅建士の要件確認、免許申請・変更届の代行など、お困りの際はお気軽にご相談ください。

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