宅建業(宅地建物取引業)を開業するには、都道府県知事または国土交通大臣の免許が必要です。
しかし、申請書類が複雑で「何を準備すればいいのかわからない」「審査で指摘されて何度もやり直しになった」という声をよく聞きます。
もちろんご自身で申請は可能ですが、初めての場合、都道府県庁に3-10回通うことを覚悟してください。
この記事では、宅建業免許の新規申請を最短で通すための要件チェックリストを完全網羅します。
申請前にこの記事を確認すれば、書類不備による審査遅延を防ぎ、スムーズに免許を取得できます。
宅建業免許とは?基本知識
宅建業免許が必要な業務
以下の業務を「業として」行う場合、宅建業免許が必要です。
| 業務内容 | 免許の要否 |
|---|---|
| 宅地・建物の売買 | ✅ 必要 |
| 宅地・建物の交換 | ✅ 必要 |
| 宅地・建物の売買・交換・賃貸の代理 | ✅ 必要 |
| 宅地・建物の売買・交換・賃貸の媒介(仲介) | ✅ 必要 |
| 自己所有物件の賃貸のみ | ❌ 不要 |
| 自己所有物件の管理のみ | ❌ 不要 |
「業として」の意味:不特定多数を相手に、反復継続して行うこと
知事免許と大臣免許の違い
| 免許の種類 | 事務所の設置場所 | 申請先 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| 都道府県知事免許 | 1つの都道府県内のみ | 都道府県の担当課 | 33,000円(東京都) |
| 国土交通大臣免許 | 2つ以上の都道府県 | 地方整備局(直接申請) | 90,000円(登録免許税) |
大臣免許の申請は、都道府県を経由せず地方整備局に直接申請する方式に変更されました。
【最重要】免許取得の7つの必須要件
宅建業免許を取得するには、以下の7つの要件すべてを満たす必要があります。
要件① 欠格事由に該当しないこと
代表者・役員・政令使用人が以下の欠格事由に1つでも該当すると免許は取得できません。
主な欠格事由(宅建業法第5条)
| 欠格事由 | 該当期間 |
|---|---|
| 成年被後見人、被保佐人 | 該当している間 |
| 破産者で復権を得ていない者 | 復権まで |
| 禁錮以上の刑に処せられた者 | 刑の執行終了から5年間 |
| 宅建業法違反で罰金刑を受けた者 | 刑の執行終了から5年間 |
| 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反で罰金刑 | 刑の執行終了から5年間 |
| 免許を取り消された者(不正取得・業務停止処分違反) | 取消から5年間 |
| 免許申請前5年以内に宅建業に関し不正・著しく不当な行為をした者 | 行為から5年間 |
チェックポイント:
- ✅ 代表者・役員全員の身分証明書(本籍地の市区町村発行)
- ✅ 登記されていないことの証明書(法務局発行)
- ❌ 専任の宅地建物取引士については不要(R6.10.1以降)
要件② 法人の目的に宅建業が含まれていること
法人の場合、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の目的欄に宅建業を営む旨の記載が必要です。
目的欄の記載例
✅ 良い例:
- 「宅地建物取引業」
- 「不動産の売買、交換、賃貸借及びその仲介・代理」
- 「不動産の売買、賃貸及び管理」
❌ 悪い例:
- 「不動産管理業」のみ(売買・仲介が含まれない)
- 目的欄に記載なし
注意:目的欄に記載がない場合は、申請前に目的変更登記が必要です(司法書士に依頼)。
要件③ 代表者・政令使用人が常勤していること
常勤の定義
常勤とは、通常の勤務時間に事務所に勤務し、継続的に業務に従事することです。
政令使用人とは?
代表者が常勤できない場合(他社の代表取締役を兼務など)、政令使用人を配置することで要件を満たせます。
政令使用人:支店長・営業所長など、代表者から委任を受けて宅建業に係る契約を締結する権限を持つ者
要件④ 専任の宅地建物取引士を設置していること
設置基準
| 事務所の種類 | 必要人数 |
|---|---|
| 本店・支店・その他の事務所 | 業務に従事する者5人につき1人以上 |
| 案内所・モデルルーム | 最低1人以上 |
計算例:
- 業務従事者が1~5人 → 1人以上
- 業務従事者が6~10人 → 2人以上 ・・・
「業務に従事する者」とは?
以下の者が該当します。
✅ 含まれる人
- 代表者
- 常勤役員(非常勤役員は除く)
- 正社員・契約社員
- 継続的雇用関係にあるパート・アルバイト
- 総務・経理などの一般管理部門の職員(宅建業を主としている場合)
❌ 含まれない人
- 非常勤役員
- 監査役
- 短期・不定期のアルバイト
専任の宅地建物取引士の要件
専任の宅地建物取引士は、「常勤性」と「専従性」の2つを満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 常勤性 | その事務所に通常の勤務時間に常勤していること |
| 専従性 | 専ら宅建業の業務に従事していること |
❌ 専任性が認められないケース
以下の場合、専任の宅地建物取引士として認められません。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 他社の代表取締役・常勤役員 | 常勤性が認められない |
| 他社の正社員 | 常勤性が認められない |
| 通勤時間が片道2時間以上 | 常勤性が認められない |
| 監査役 | 専従性が認められない |
| 司法書士・行政書士など他士業と兼業※ | 専従性が認められない場合あり |
※例外:東京都では令和6年11月1日から、通常勤務時間外(夜間・休日)の副業は条件付きで認められるようになりました。
【重要】宅地建物取引士証の有効期限
- ✅ 宅地建物取引士証の有効期限内であること
- ✅ 審査期間中に有効期限が切れる場合は事前更新が必要
- ✅ 試験合格者は宅地建物取引士証の交付を受けていること
更新の注意点:講習会の予約が取りにくいため、余裕を持って更新手続きを行いましょう。
【重要】宅地建物取引士資格登録簿の従事先
新規免許申請時、専任の宅地建物取引士の資格登録簿の「従事先」欄は空欄でなければなりません。
手続きの流れ:
- 前職を退職 → 本人が従事先変更登録申請(従事先を抹消)
- 免許申請 → 審査 → 免許交付
- 免許交付後 → 本人が従事先変更登録申請(新しい勤務先を登録)
要件⑤ 事務所を設置していること
事務所の定義
宅建業法における「事務所」とは、以下の要件を満たす施設です。
✅ 継続的に業務を行うことができる施設
✅ 社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態
事務所として認められる条件
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 独立性 | 他の事業と明確に区分されたスペース(壁・パーテーション) |
| 継続性 | 長期契約(マンスリーオフィスは不可) |
| 建物 | 建物として登記できる構造(コンテナハウスは不可) |
| 設備 | 机・椅子・電話・FAX・パソコン・書類保管庫など |
| 接客スペース | 顧客と対面で契約・相談できるスペース |
❌ 事務所として認められないケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| バーチャルオフィス | 実体がない |
| シェアオフィスの共用スペース | 独立性がない |
| マンスリーオフィス | 継続性がない |
| コンテナハウス | 建物として登記できない |
| 自宅の一室(区分が不明確) | 独立性がない |
✅ 自宅を事務所にする場合
以下の条件を満たせば、自宅を事務所として使用できます。
- ✅ 宅建業務専用のスペースが明確に区分されている
- ✅ 顧客を迎えるスペースがある
- ✅ 看板・標識の設置が可能
- ✅ 賃貸物件の場合、事務所使用の承諾を得ている
要件⑥ 営業保証金の供託または保証協会への加入
免許取得後、営業開始前に以下のいずれかの手続きが必要です。
| 方法 | 金額(本店) | 金額(支店) | 手続先 |
|---|---|---|---|
| 営業保証金の供託 | 1,000万円 | 500万円/1事務所 | 法務局 |
| 保証協会への加入 | 約60万円 | 約30万円/1事務所 | 保証協会 |
注意:免許取得から3ヶ月以内に供託または加入の届出が必要です。
要件⑦ 資産要件(一定の財産的基礎)
明確な基準はありませんが、事業を継続できる財産的基礎があることが求められます。
審査のポイント:
- 債務超過でないこと
- 極端な赤字でないこと
- 営業保証金または保証協会費用を用意できること
申請から免許取得までの流れ
標準的なスケジュール(都道府県知事免許)
| ステップ | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| 1. 事前準備 | 1~2ヶ月 | 要件確認、書類収集、事務所準備 |
| 2. 申請 | 1日 不備があればその対応期間が必要 | 申請書類一式を提出 |
| 3. 審査 | 30~50日 | 書類審査・実地調査(場合による) |
| 4. 免許交付 | 1日 | 免許証の交付(窓口受取) |
| 5. 営業保証金等 | 免許後すぐ | 供託または保証協会加入 |
| 6. 届出 | 3ヶ月以内 | 営業保証金供託等の届出 |
| 7. 営業開始 | 届出後 | 宅建業の営業が可能 |
審査期間の注意点:
- 書類不備がある場合、さらに時間がかかる
- 実地調査が行われる場合もある
- 土日祝日は含まれない(開庁日ベース)
申請に必要な書類(主なもの)
法人の場合
| 書類名 | 取得先 | 有効期限 |
|---|---|---|
| 免許申請書 | 自治体のHP | – |
| 登記事項証明書(履歴事項全部証明書) | 法務局 | 3ヶ月以内 |
| 定款 | – | 認証済み |
| 役員の身分証明書 | 本籍地の市区町村 | 3ヶ月以内 |
| 役員の登記されていないことの証明書 | 法務局 | 3ヶ月以内 |
| 役員の略歴書 | 自治体の様式 | – |
| 宅地建物取引士証のコピー | – | 有効期限内 |
| 専任の宅地建物取引士設置証明書 | 自治体の様式 | – |
| 事務所の写真 | – | 申請直近 |
| 賃貸借契約書のコピー(賃貸の場合) | – | – |
| 使用承諾書(賃貸の場合) | 貸主 | – |
| 法人の決算書 | – | 直近決算期 |
2025年4月改正:専任の宅地建物取引士の身分証明書・登記されていないことの証明書は提出不要になりました。
最短で通すための「失敗しないチェックリスト」
□ 事前準備段階
- [ ] 欠格事由に該当しないことを確認した
- [ ] 法人の目的欄に宅建業の記載がある(ない場合は目的変更登記済み)
- [ ] 専任の宅地建物取引士を確保した
- [ ] 宅地建物取引士証の有効期限を確認した(審査期間中に切れない)
- [ ] 専任取引士の資格登録簿の従事先を「空欄」にした
- [ ] 事務所要件を満たす物件を確保した
- [ ] 賃貸物件の場合、事務所使用の承諾を得た
- [ ] 営業保証金または保証協会費用の準備ができている
□ 書類作成段階
- [ ] 最新の様式を使用している(2025年4月以降は新様式)
- [ ] 申請書の記載に誤りがない
- [ ] 添付書類の有効期限内である(3ヶ月以内)
- [ ] 事務所の写真が鮮明で要件を確認できる
- [ ] 略歴書に空白期間がない
- [ ] 略歴書と登記簿の役員経歴に矛盾がない
□ 申請時
- [ ] 正本・副本の両方を用意した
- [ ] 添付書類のコピーを副本に添付した
- [ ] 手数料を用意した(現金書留または窓口納付)
- [ ] 本人確認書類を持参した
- [ ] 代理申請の場合、委任状を用意した
よくある不備・指摘事項
1. 専任取引士関係
❌ 宅地建物取引士証の有効期限切れ → 審査期間中に切れる場合も事前更新が必要
❌ 資格登録簿の従事先が空欄でない → 前職の従事先変更登録を忘れている
❌ 他社との兼務が認められない → 他社の代表取締役・役員・正社員は専任性なし
2. 事務所関係
❌ 独立性が不十分 → パーテーションで区切っただけでは不可の場合も
❌ 賃貸借契約書に「事務所使用可」の記載がない → 貸主の使用承諾書が必要
❌ マンスリーオフィスを使用 → 継続性がないため不可
3. 法人関係
❌ 登記簿の目的欄に宅建業の記載がない → 目的変更登記が必要
❌ 役員の略歴書に空白期間がある → すべての期間を記載する必要あり
2025年の法改正ポイント
① 大臣免許の申請先変更(2025年4月1日~)
国土交通大臣免許の申請は、都道府県知事を経由せず、主たる事務所の所在地を管轄する地方整備局に直接申請する方式に変更されました。
メリット:
- 手続きの迅速化
- 事務コストの軽減
② 専任取引士の証明書提出が不要に(2025年4月1日~)
専任の宅地建物取引士にかかる「身分証明書」及び「登記されていないことの証明書」の提出が不要になりました。
注意:欠格事由に該当した場合は、免許行政庁への届出義務があります。
③ 申請様式の変更(2025年4月1日~)
宅地建物取引業法施行規則の改正により、宅地建物取引業免許申請・届出の様式が変更されました。
④ 電子申請の開始(2025年1月6日~)
東京都では、国土交通省手続業務一環処理システム(eMLIT)を利用して電子申請が可能になりました。
注意:手数料の電子納付はまだ不可。窓口または郵送(現金書留)が必要です。
まとめ|最短で免許を取得するために
宅建業免許の新規申請を最短で通すためのポイントは以下の通りです。
- ✅ 事前に要件を完全に満たす(特に専任取引士・事務所要件)
- ✅ 最新の様式を使用する(2025年4月以降は新様式)
- ✅ 書類の有効期限を確認する(3ヶ月以内)
- ✅ 専任取引士の資格登録簿を確認する(従事先は空欄に)
- ✅ 審査期間を見越したスケジュールを立てる(30~50日)
「要件を満たしているか不安」「書類作成が複雑で困っている」という場合は、宅建業免許申請を専門とする行政書士への相談をおすすめします。
当事務所でも「宅建業免許の新規申請・更新・変更届出」のサポートを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。