建設業許可の申請を進めていると、「経営業務の管理責任者と専任技術者、両方の要件を満たせる人が社内に一人しかいない。これは兼任できるのか?」という疑問にぶつかることがあります。
結論から言えば、条件を満たしていれば同一人物が兼任することは可能です。
中小規模の建設業者では、社長や取締役が両方を兼ねているケースは珍しくありません。
ただし、見落としがちな注意点があります。
まず「営業所技術者」とは?名称変更の背景
かつて「専任技術者」と呼ばれていた役割が、令和6年(2024年)12月13日施行の建設業法改正により「営業所技術者」へと名称変更されました。
正確には次のように分類されています。
- 一般建設業許可の場合 → 「営業所技術者」(建設業法第7条第2号)
- 特定建設業許可の場合 → 「特定営業所技術者」(建設業法第15条第2号)
- 両者を合わせた総称 → 「営業所技術者等」
ただし、これは呼称の変更のみであり、要件そのものに変更はありません。
ちなみに、「経営業務の管理責任者(経管)」は名称変更されていません。
経営業務の管理責任者と営業所技術者、それぞれの役割
経営業務の管理責任者(経管)
建設業の経営を適正に管理するために置く責任者。
建設業に関する一定以上の経営経験(原則として役員5年以上など)を持つ常勤の者が就任します。
会社全体の経営を担う立場です。
営業所技術者(旧・専任技術者)
建設工事の請負契約の技術的な管理を担う者。
対象業種に応じた国家資格や実務経験が求められ、営業所ごとに常勤で配置する必要があります。
この二つは、求められる「経験・能力の種類」が異なります。
一方は「経営能力」、もう一方は「技術力」。
しかし、同一人物がどちらの要件も満たしている場合は、兼任が認められています。
兼任できる条件
兼任が認められるためには、次の条件を同時に満たす必要があります。
条件1:同一の営業所に常勤していること
経管は主たる営業所(本社・本店)に常勤、営業所技術者は配置された営業所に常勤であることが必要です。
したがって、「本社で経管、支店で営業所技術者」という形の兼任は認められません。
あくまでも同じ営業所の中で両方を兼ねる場合に限られます。
小規模な建設業者で、本社一箇所のみで営業している場合は、この条件を満たしやすいでしょう。
条件2:両方の要件をそれぞれ満たしていること
兼任は「要件を満たしていること」が大前提です。
経管の経験要件と、営業所技術者の資格・実務経験要件の、両方を独立して満たしている必要があります。どちらか一方を兼任によって補うことはできません。
たとえば、1級建築施工管理技士の資格を持ち、かつ取締役として5年以上建設業の経営に関与してきた社長であれば、両方を兼任する条件を満たせる可能性があります。
兼任できない場合・注意が必要なケース
他社での常勤役職との兼任
経管も営業所技術者も「常勤」が求められます。
他の会社で常勤の代表取締役や経管、営業所技術者などを兼ねている人は、自社でこれらの役割に就くことができません。
宅建業の「専任の宅地建物取引士」との関係
同一の営業所内であれば、建設業の営業所技術者と宅建業の専任の宅地建物取引士を兼任することは可能とされています。
ただし、マンション管理業の専任の管理業務主任者との兼任は認められていません。
同一営業所内であっても不可とされているので注意が必要です。
建築士事務所の「管理建築士」との関係
管理建築士も常勤が求められる役職ですが、同一の営業所内であれば営業所技術者と兼任できます。
ただし、営業所が異なる場合は不可です。
令和6年改正でさらに変わった点:現場との兼務が可能に
令和6年12月の改正では、名称変更だけでなく、営業所技術者が一定の条件のもとで現場の主任技術者または監理技術者を兼務できるようになりました(建設業法第26条の5)。
改正前は、営業所に常勤する営業所技術者(専任技術者)が専任性を要する工事現場の技術者を兼務することは原則として認められていませんでした。
これが中小建設業者にとっての大きな負担でした。
改正後は、次の要件をすべて満たす場合に限り、兼務が認められます。
- 当該営業所で締結された工事であること
- 請負金額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること
- 営業所から工事現場までの移動時間が概ね2時間以内であること
- 情報通信機器(カメラ等)を活用した施工管理体制が整っていること
- 連絡員の配置など一定の体制が整備されていること
人手不足が深刻な建設業にとって、この改正は実務上の大きな前進です。
ただし、条件の確認と体制整備が必要なため、活用する際は事前に内容をしっかり確認することが重要です。
兼任するメリットと注意点の整理
メリット
中小規模の建設業者にとって、経管と営業所技術者を同一人物が担えることは、人員配置の面で大きなメリットになります。
許可要件を満たすために外部から人材を招く必要がなくなり、コスト面でも効率的な体制が構築できます。
注意点
一方で、リスクもあります。
その人物が退職・死亡・体調不良などで不在になった場合、経管と営業所技術者の両方が一度に欠けることになります。
許可要件の欠如は許可取消の対象になるため、後継者・代替人材の育成は常に意識しておく必要があります。
法人であれば、将来的に経管・営業所技術者どちらかの要件を満たせる人材を複数育てておくことが、許可の安定的な維持につながります。
まとめ
建設業許可の経営業務の管理責任者と営業所技術者(旧・専任技術者)は、同一の営業所に常勤し、両方の要件を満たしていれば同一人物が兼任できます。
令和6年12月の法改正により「専任技術者」は「営業所技術者」へと名称が変わりましたが、要件そのものは変わっていません。
一方で、営業所技術者が一定条件のもとで現場技術者を兼務できるようになるなど、実務面での運用は大きく変化しています。
「自社の状況で兼任が認められるか」「どのような体制を整えればよいか」については、個別の事情によって判断が変わります。
許可要件の確認や申請書類の準備は、ぜひ専門家にご相談ください。
