補助金申請や許認可手続きを外部に依頼している中小企業経営者の中には、「行政書士法が変わったと聞いたが、結局何が変わったのか」「自社の依頼先は今のままで問題ないのか」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。

2026年1月1日に施行された「行政書士法の一部を改正する法律」(令和7年法律第65号)から、半年以上が経過しました。
本記事では、施行前後の経緯と、日本行政書士会連合会(日行連)の公式発表をもとに、この改正が業界にもたらしている変化を整理します。
なお、摘発件数や廃業事例といった具体的な統計は現時点で公的に確認できていないため、本記事では制度面・公式発表ベースの内容に絞って解説します。

行政書士法改正、半年間の振り返り

今回の改正は、第217回国会(常会)に提出され、2025年5月30日に衆議院本会議、同年6月6日に参議院本会議でそれぞれ可決・成立し、令和8年1月1日から施行される5点の改正が行われました。
改正の柱は主に次の5点とされています。

  1. 行政書士の「使命」の明記(目的規定から使命規定への変更)
  2. 行政書士の「職責」の新設(品位保持・公正誠実・デジタル社会への対応等)
  3. 特定行政書士の業務範囲の拡大
  4. 業務制限規定(第19条)の趣旨の明確化
  5. 業務制限違反に関する両罰規定の整備

日行連の会長談話によれば、行政書士法第1条の目的規定が使命規定に改められ、行政書士がその業務を通じて行政手続の円滑な実施と国民の利便に貢献し、国民の権利利益の実現に資することを使命とする、という位置づけになりました。
単なる文言変更にとどまらず、行政書士という専門職の社会的役割そのものを問い直す改正だと捉える実務家の声も見られます。

2026年は行政書士法が1951年(昭和26年)に公布されてから75周年という節目の年にもあたり、日行連会長はこの改正の施行を「行政書士制度が大きく進展する」出来事として位置づけています。

日本行政書士会連合会の公式発表・談話から見える方向性

会長年頭談話が示したもの

2026年1月1日、日行連会長は年頭談話の中で改正法の施行について言及しました。
この談話では、改正の意義を制度の節目とあわせて強調する内容となっており、行政書士業界全体として今回の改正を前向きに受け止めていることがうかがえます。

第19条・第23条の3の改正趣旨に関する会長談話

実務への影響という観点でとりわけ重要なのが、業務制限規定(第19条)と両罰規定(第23条の3)に関する会長談話です。
この談話では、改正の背景について次のように説明されています。

コロナ禍において、行政書士でない者が給付金等の代理申請を行い、多額の報酬を受け取っていた事例が見られたことが、今回の改正の背景の一つとして挙げられています。
これを受けて、「会費」「手数料」「コンサルタント料」「商品代金」など、どのような名目であっても対価を受け取って官公署への提出書類等を作成する行為は、名目にかかわらず法第19条第1項の業務制限規定に抵触しうることが明確化されました。

さらに、両罰規定の整備により、業務制限に違反した本人だけでなく、その者が所属する法人に対しても罰金刑が科される可能性がある枠組みが加えられました。
この点は、無資格でありながら組織的に補助金申請代行等を行う事業者にとって、これまで以上に重い法的リスクとなり得る内容です。

なお、日行連の談話では、こうした行為は改正法の施行日より前であっても、現行法上すでに違反となり得るとも説明されており、改正はルールを新設したというより、従来から曖昧だった線引きを明確化する性質のものと位置づけられています。

行政書士登録数の増加

直近、行政書士の登録人数が顕著に増加しています。
下記は登録者の推移です。

2017年46,205人+764人
2018年46,915人+710人
2019年47,901人+986人
2023年52,015人
2024年52,796人+781人
2025年54,261人+1,465人
2026年8月1日55,770人+1,509人

出典:月刊日本行政

行政書士法改正が公表されてから、明らかに行政書士の登録者数が増加しています。
今まで登録せずに申請などを行ってきた者(以前から違法です)が慌てて登録した場合も含まれているようです。

業界内で進んでいる変化(AI活用・デジタル対応との関連)

今回の改正では、行政書士の職責として「デジタル社会への対応」が努力義務として明文化されたことも見逃せないポイントです。
この規定を背景に、現場ではAIを活用した業務効率化への関心が高まっているとみられます。

実際、AIは定型的な書類作成の初稿作成や情報整理といった反復作業を効率化するツールとして、行政書士の実務にも徐々に浸透し始めているとの指摘があります。

一方で、依頼者ごとの個別事情を踏まえた申請戦略の設計や、最新の法改正・通達への対応、行政担当者との折衝といった業務については、現状のAIでは代替が難しいとされ、「なくなる業務」と「伸びる業務」の分化が進みつつあるという見方も業界内で共有されています。

中小企業支援の現場(補助金・許認可)で起きている変化

補助金申請支援や許認可手続きを日常的に行う中小企業にとって、今回の改正は直接的な影響を及ぼす可能性がある分野です。

特に、外部の事業者に補助金申請書類の作成を委託している場合、その委託先が行政書士(または弁護士等の有資格者)であるかどうかを確認する重要性が、これまで以上に増していると考えられます。

行政書士でない者が「代理作成」に該当する業務(申請企業に代わって書類を作成する業務)を有償で行うことは、名目にかかわらず業務制限規定に抵触するおそれがあるため、依頼企業側としても、委託契約の内容や業務範囲を見直す動きが今後広がる可能性があります。

今後半年〜1年で想定される動き

現時点で公的な統計は確認できていないものの、次のような動きが今後進んでいく可能性があります。

  • 業務制限規定の明確化を受けた、補助金申請代行業者側での業務範囲の見直し
  • 中小企業側での、外部委託契約書の点検・有資格者確認の動き
  • デジタル社会への対応(努力義務)を背景とした、行政書士によるAI・DX活用支援の広がり
  • 2026年度行政書士試験からの新法対応(試験範囲への算入)による、業界全体の制度理解の深化

これらはあくまで現時点での傾向としての見立てであり、断定できるものではない点にご留意ください。

まとめ

行政書士法改正の施行から半年が経過し、制度面では「使命」「職責」の明記や業務制限規定の明確化といった枠組みが整いつつあります。

中小企業経営者にとって特に重要なのは、補助金申請や許認可手続きの委託先が有資格者かどうかという点です。

関連記事