「バレなければ問題ない」は本当か
「500万円を少し超えるだけだから、ばれないだろう」「これまでも問題なかったし大丈夫」
──そう考えて無許可のまま工事を受注し続けている業者が、残念ながら後を絶ちません。
しかし現実には、無許可営業の発覚ルートは複数あり、いつ・どこから表面化してもおかしくない状況が続いています。
しかも発覚した場合のダメージは、罰金や営業停止にとどまらず、事業の継続そのものが困難になるケースもあります。
この記事では、無許可営業がどのような経緯で発覚するのか、発覚後にどのような処分が待っているのかを具体的にご説明します。
無許可営業が発覚する主なきっかけ
① 税務調査
最も多い発覚ルートのひとつが、税務調査です。
税務署が売上や入出金の記録を精査する過程で、500万円以上の工事請負契約が複数見つかるケースがあります。
契約書・請求書・入金履歴などが調査対象となるため、「一件一件は500万円未満に見える」ような分割契約であっても、合計額が明らかになれば建設業法違反の疑いとして行政機関への情報提供につながることがあります。
2つの契約がさほど期間を空けずに結ばれている場合は、連続した1つの契約とみなされ、合計金額で判断されます。
② 元請業者・下請業者からの通報
取引先が「この業者は本当に許可を持っているのか」と確認した際に発覚するケースがあります。
元請業者は、無許可の下請業者に工事を発注すること自体が建設業法違反になる場合があるため、取引先の許可状況を厳しくチェックする傾向にあります。
逆に、取引上のトラブルや代金未払いをきっかけに、下請業者側から行政機関へ情報提供されるケースもあります。
③ 同業者・競合他社からの通報
「あの業者は許可を持っていないのに、なぜ大きな工事を請けられるのか」という不満から、同業者が監督行政庁に通報する場合があります。
特に地域密着型の建設業では、業界内での情報が広まりやすく、こうした通報は珍しくありません、というよりも、かなり多いと思ってください。
④ 行政による立入検査
国土交通省や都道府県は、建設業者に対して定期的または不定期に立入検査を実施しています。
国土交通省の公表によれば、大臣許可業者を対象とした立入検査の実施件数は2023年度で806件にのぼります。
立入検査では、工事契約書・請求書・工程表・会計帳簿などが確認されます。
無許可のまま受注した工事の契約書が発見されれば、その場で違反が確定します。
⑤ 施主(発注者)とのトラブル
工事の施工不良や代金トラブルが生じた際、施主が「業者の許可状況を確認したい」と動くことがあります。
許可番号を求めても提示できない、あるいは許可検索サイトで該当がないと判明した時点で、無許可営業が表面化します。
無許可で営業している場合、工事保険についても保険会社が契約違反を理由に保険金の支払いを拒否することがあり、事故やトラブルが発生した際の経済的な負担がすべて事業者に降りかかります。
⑥ SNS・インターネット上の情報
施工実績の写真やPRをSNSに投稿したことがきっかけで、工事規模や金額が周囲に伝わり、「あの業者は許可があるのか」という疑問を持たれるケースもあります。
2025年3月には、SNSに派手な生活ぶりを投稿してメンバーを集めていた業者グループが、無許可でリフォーム工事を行ったとして建設業法違反の疑いで警視庁に逮捕された事案がNHKでも報道されました。
SNSの情報が捜査の端緒になったとみられています。
発覚した場合のペナルティ
刑事罰(最も重い罰則)
無許可営業が建設業法第3条違反として認定された場合、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」(建設業法第47条)が科される可能性があります。
悪質な場合は懲役と罰金の両方が科されることもあります。
2023年には、許可を受けずに約693万円の屋根修繕工事や530万円の外壁塗装工事を請け負った疑いで、リフォーム会社の関係者4名が建設業法違反容疑で逮捕されました。
いずれも軽微な工事の範囲(500万円以下)を大きく超えており、刑事事件にまで発展しています。
行政処分(監督処分)
刑事罰とは別に、監督行政庁(都道府県知事または国土交通大臣)から行政処分が科されます。
内容は違反の程度によって異なりますが、重大な場合は以下のような処分になります。
| 処分の種類 | 内容 |
|---|---|
| 指示処分 | 改善措置を命じる行政処分 |
| 営業停止処分 | 最長1年間の営業停止 |
| 許可の取消し | 建設業許可が失効する最も重い処分 |
許可が取り消されると、その後5年間は新たな許可を受けることができません。
この間は軽微な工事しか請け負えないため、事業規模の大幅な縮小を余儀なくされます。
処分内容の公表
行政処分を受けた業者の情報は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」に掲載され、一般に公開されます。
社名・処分内容・処分日が検索できる状態になるため、取引先や発注者に知られることになります。
信用を失うだけでなく、既存の取引や受注にも深刻な影響が出ます。
「許可業者でも無許可になるケース」に注意
注意が必要なのは、すでに建設業許可を持っている業者であっても、無許可営業とみなされる場合があるという点です。
建設業許可は29業種ごとに取得するものです。
たとえば、「内装仕上工事業」の許可を持っていても、「塗装工事業」の許可なしに500万円以上の塗装工事を請け負えば、その業種では無許可営業となります。
「一式工事の許可があれば何でもできる」という誤解も多く、こうしたケースでの処分事例も発生しています。
許可を持っている業者こそ、受注する工事が許可業種の範囲内かどうかを改めて確認することが重要です。
よくある疑問 Q&A
Q. 「税務調査が入っても、工事の内容までは分からないのでは?」
請求書・工事契約書・入金記録などが調査対象となります。
500万円を超える工事の記録が残っていれば、税務署から行政機関への情報提供につながる可能性があります。
「証拠は残らない」という認識は危険です。
Q. 「下請けとして請けているだけなら問題ないのでは?」
元請・下請を問わず、500万円以上の専門工事を受注する場合は許可が必要です。
「元請業者が許可を持っているから大丈夫」という認識は誤りで、下請業者側も独自に許可を取得している必要があります。
Q. 「今から許可を取れば、過去の無許可営業は問題なくなるのでは?」
許可を取得したからといって、過去の違法受注の違法性がなくなるわけではありません。
ただし、早期に許可を取得して適正な営業に移行することが、リスク軽減の観点では最善の対応になります。
まとめ──「発覚リスク」は思っているよりずっと身近にある
無許可営業の発覚ルートは、税務調査・通報・立入検査・取引先との関係など多岐にわたります。
「今まで大丈夫だったから」という経験則は、リスクがないことを意味しません。
発覚した場合のダメージは、罰金や営業停止にとどまらず、許可取消し・5年間の業務制限・社名の公表など、事業の根幹を揺るがすものになります。
「そろそろ許可を取らないと」と感じている方は、ぜひ早めに行政書士にご相談ください。
