「もしも」に備えながら、経営のメリットも得る
地震や水害、感染症の拡大、そしてサイバー攻撃
——事業を止めかねないリスクは年々多様化しています。
「備えが必要なのはわかるが、何から手をつければよいか」と感じる経営者の方は多いと思います。
そうした備えを後押しするのが「事業継続力強化計画」です。
この計画は、防災・減災の体制づくりにつながるだけでなく、税制優遇や補助金の加点といった経営上のメリットにも結びつきます。
本記事では、制度の概要とメリット、近年加わったサイバー対策の位置づけ、作り方までをわかりやすく整理します。
事業継続力強化計画とは
事業継続力強化計画とは、中小企業強靱化法(2019年7月施行)に基づき、中小企業が自然災害や感染症などのリスクに備えて、防災・減災や早期復旧の体制を定めた計画です。
中小企業庁が所管し、経済産業大臣の認定を受ける制度です。
計画には、自社のみで申請する「単独型」と、複数の事業者が連携して申請する「連携型」があります。
実施期間は3年以内で、認定の有効期間も3年間です。
期間満了の前に更新申請を行うことで、継続して認定を受けられます。
申請は電子申請が基本のため、事前にGビズIDを取得しておくと手続きがスムーズです。
なお、いわゆる「BCP(事業継続計画)」と混同されがちですが、両者は別物です。
BCPはより詳細で包括的な計画を指すのに対し、事業継続力強化計画は記載が比較的簡潔で、認定によって税制・補助金などの実利的なメリットにつながる点に特徴があります。
近年は「サイバー攻撃」も支援対象に
この制度で押さえておきたいのが、自然災害だけでなくサイバー攻撃への備えも支援の対象に含まれている点です。
企業のIT活用が進み、サイバー攻撃による事業停止のリスクが高まっていることを背景に、計画の中でサイバーリスクへの対策を位置づけることができます。
具体的には、「自社がサイバー攻撃によるシステム障害で生産や出荷が停止すると、取引先に大きな影響を与える」といった想定を計画に盛り込み、その備えとして対策を記載する形です。
自然災害・感染症・サイバー攻撃を一体のリスクとして捉え、まとめて備える計画を作れる点は、現在の経営環境に即していると言えます。
中小企業のセキュリティ対策と組み合わせれば、防災とサイバーの両面から事業継続力を高められます。
メリット1:防災・減災設備の税制優遇
認定を受けた中小企業は、「中小企業防災・減災投資促進税制」の対象になります。
計画に記載した防災・減災設備を認定後おおむね1年以内に導入した場合、その設備の取得価額について特別償却(通常の減価償却に上乗せして経費計上できる優遇措置)を適用できます。
償却率は取得時期によって異なり、令和7年4月1日以降に取得した対象設備は16%です(それ以前の取得分は18%でした)。
対象となる設備には、自家発電設備、制震・免震装置、浸水防止設備、データバックアップシステムなどがあります。
機械装置は100万円以上、器具備品は30万円以上、建物附属設備は60万円以上といった取得価額の要件もあるため、詳しくは最新の制度概要で確認してください。
償却率や要件は改正されることがあるので、導入前のチェックが欠かせません。
メリット2:補助金の加点
本記事の流れの中でも特に重要なのが、補助金の加点です。
事業継続力強化計画の認定は、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)など、主要な補助金の審査で加点対象となっています。
補助金は採択をめぐる競争があるため、同程度の申請内容であれば、認定を受けている企業の方が採択で有利になる可能性があります。
設備投資やデジタル化に補助金を活用したい場合、あらかじめこの計画の認定を受けておくことは有効な一手です。
経営力向上計画とあわせた「2つの計画 × 補助金」の使い方は、関連記事で詳しく扱います。
メリット3:金融支援と保険料割引
三つ目は、資金面と保険面のメリットです。
認定を受けた事業者は、計画に基づく設備投資に必要な資金について、政策金融機関による低利融資を利用できる場合があります。
また、一部の損害保険会社では、認定企業に対して損害保険料の割引を提供しています。
防災・減災への取り組みが、保険コストの軽減にもつながり得るということです。
メリット4:信頼性の向上(認定ロゴマーク)
四つ目は、対外的な信頼性です。
認定を受けた企業は、事業継続力強化計画の認定ロゴマークを使用できます。
防災・減災に取り組む企業であることを、取引先や顧客に対して示す材料になります。
近年は取引の条件として事業継続体制を重視する動きもあり、こうしたアピールは取引維持や受注の面でもプラスに働くことがあります。
計画の作り方・申請の流れ
申請は、まず中小企業庁の「事業継続力強化計画 策定の手引き」を入手するところから始めます。
手引きは頻繁に更新されるため、必ず最新版を使ってください。
計画では、(1)事業継続力強化に取り組む目的、(2)想定する災害等のリスク(自然災害・感染症・サイバー攻撃など)、(3)初動対応の手順、(4)ヒト・モノ・カネ・情報への被害想定と対策、(5)平時の推進体制などを記載します。
サイバー攻撃を想定する場合は、(2)と(4)の「情報」への影響として位置づけると整理しやすくなります。
作成後は、GビズIDを用いて電子申請を行い、認定を受けます。
計画策定にあたっては、中小機構による専門家の支援を活用する方法もあります。
税制優遇を狙う場合は、設備の取得タイミングと認定の前後関係に注意してください。
まとめ:備えを「経営メリット」に変える
事業継続力強化計画は、災害やサイバー攻撃への備えを進めながら、税制優遇・補助金加点・金融支援・信頼性向上といった実利的なメリットも得られる制度です。
記載が比較的簡潔で取り組みやすい一方、税制要件や手引きは更新されやすく、設備取得のタイミングなど実務上の注意点もあります。
当事務所は認定支援機関として、事業継続力強化計画の策定支援や、補助金申請との組み合わせのご相談を承っています。
先日お問い合わせの多いサイバー対策まで含めた計画づくりにも対応します。
「何から備えればよいかわからない」という段階からでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
