「すでに届出をして営業しているから、うちは関係ない」
新宿区で民泊を運営している方の多くは、そう考えているかもしれません。

しかし2026年9月、新宿区が住宅地や学校周辺での民泊営業を既存の施設も含めて原則禁止する方針を固めたと報じられました。
報道では、区内の届出住宅の約半数にあたる約2,000件が営業できなくなる可能性があるとされています。

この記事では、報道された方針の内容と今後のスケジュールを整理したうえで、自分の物件が対象になるかを確認する方法と、「旅館業に切り替えれば続けられるのか」という疑問に、新宿の行政書士の立場からお答えします。

この記事の要点

  • 新宿区は、住居専用地域・文教地区などでの民泊を、既存施設も含めて原則禁止する方針(猶予期間あり)。商業地域も年間の上限を180日から120日に短縮する方向
  • まず確認すべきは、物件の「用途地域」「文教地区かどうか」「家主が住んでいるか」の3点
  • 住居専用地域・文教地区では、旅館業への切り替えも原則としてできない。早めに出口を検討する必要がある

※本記事は2026年9月26日時点の報道と新宿区の公表情報をもとにしています。
条例改正はまだ決定していません。
区の正式な案(パブリックコメント資料)が公表された時点で、本記事を更新します。

1. 報道された新宿区の方針

何が変わるのか

報道(産経新聞、2026年9月7日)によると、新宿区の方針の概要は次のとおりです。

項目報道された方針
禁止する区域都市計画上の住居専用地域や文教地区などで、民泊の営業を原則禁止
例外家主が適切に運用できる場合などに、例外的に営業を認める
既存の施設猶予期間を設けたうえで、既存施設にも禁止を適用
商業地域など営業日数の上限を、現行の180日から120日に短縮

背景には、苦情の急増があります。
新宿区の届出住宅数は8月31日時点で3,928件と全国最多で、令和7年度には民泊に関する苦情が1,300件を超えたとされています。

今後のスケジュール(見通し)

時期予定
2026年10月区民などからの意見公募(パブリックコメント)
2027年2月区議会定例会に改正条例案を提出
2027年夏施行を目指す

2027年夏の施行を目指すことは、日本経済新聞も報じています。
ただし、これは方針と見通しの段階です。
禁止する区域の範囲や猶予期間の長さは、区の正式な案や区議会の審議で変わる可能性があります。

2. 現行ルールとの違い

現在の新宿区のルール(「新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」)と比べると、変化の大きさが分かります。

区域現行ルール報道された方針
住居専用地域月曜正午〜金曜正午は営業不可(週末のみ営業可)原則禁止(既存施設も、猶予期間後に対象)
文教地区用途地域に応じて上記のいずれか原則禁止
商業地域など年間180日まで営業可年間120日まで

現行ルールでは、住居専用地域以外では曜日を問わず年間180日まで営業できます。
つまり今回の方針は、住宅地では「週末だけ」から「原則ゼロ」へ、商業地域でも営業できる日数が3分の2になるという大きな変化です。

3. 自分の物件は対象か|今確認すべき3点

確認1:物件の「用途地域」

最初に確認すべきは、物件がある場所の用途地域です。
用途地域とは、都市計画で定められた「その土地に建てられる建物の種類」の区分です。

  • 住居専用地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域)
    → 禁止の対象になる見込み
  • それ以外(第一種・第二種住居地域、近隣商業地域、商業地域など)
    → 120日制限の対象になる見込み

用途地域は、新宿区の地図情報サービス「しんじゅくみんなのGIS」で調べられると区が案内しています。
届出の際に確認しているはずですが、マンションなどでは地域の境目にかかることもあります。念のため再確認してください。

確認2:「文教地区」に入っていないか

文教地区とは、学校や図書館の周辺の環境を守るために指定される地区です。
報道では、住居専用地域と並んで文教地区も禁止の対象とされています。

注意したいのは、文教地区は用途地域とは別に指定される点です。東京都の制度では、第2種文教地区は主に住居系以外の用途地域に指定されます。
つまり、商業系の地域にある物件でも、文教地区に入っていれば禁止の対象になる可能性があります。

確認3:家主が住んでいるか

報道では、家主が適切に運用できる場合などに、例外的に営業を認めるとされています。
自分が住んでいる住宅の一部を貸す「家主居住型」の場合は、例外に該当する可能性があります。

ただし、例外の具体的な条件はまだ公表されていません。
区の正式な案を確認する必要があります。

4. 【専門家の視点】「旅館業に切り替えればいい」は本当か

民泊(住宅宿泊事業)が続けられなくなった場合、「旅館業の許可を取って続ければいい」と考える方も多いでしょう。
旅館業の許可には年間の営業日数の上限がないため、一見よい解決策に見えます。

しかし、禁止の対象になる区域では、旅館業への切り替えも原則としてできません。

住居専用地域では、ホテル・旅館を営めない

旅館業の施設は、建築基準法上「ホテル又は旅館」という用途になり、用途地域ごとに建てられるかどうかが決まっています。
ホテル・旅館が可能なのは、原則として第一種住居地域(3,000㎡以下)、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域に限られます。
住居専用地域では、旅館業の許可は取れません。(「専用」が入っているか否かが重要!)

文教地区でも、ホテル・旅館は原則として建てられない

東京都の文教地区建築条例では、文教地区内に建てられない建築物として、ホテル又は旅館が挙げられています。
知事の許可による例外はありますが、民泊の代わりとして使える道とは言えません。

つまり、今回禁止の対象になる見込みの区域は、もともと旅館業ができない区域とほぼ重なっているのです。
この区域のオーナーは、「猶予期間のうちに撤退するか、賃貸住宅など別の用途に切り替えるか」を考える必要があります。

商業地域などでは、旅館業への切り替えが現実的な選択肢に

一方、商業地域や近隣商業地域などにある物件は、上限が120日に減るなら、旅館業(簡易宿所など)への切り替えが有力な選択肢になります。
ただし、許可を取るには次のハードルを越える必要があります。

確認すべき点内容
建築基準法「住宅」から「ホテル又は旅館」への用途変更。規模によっては建築確認の手続きが必要(建築士に相談)
消防法自動火災報知設備などの設置基準が、住宅より厳しくなる場合がある
新宿区の条例新宿区旅館業法施行条例の構造設備基準などを満たす必要がある
建物の管理規約・契約マンションの管理規約や賃貸借契約で、旅館業の営業が認められているか

物件によっては工事費が大きくなり、採算が合わないこともあります。
「切り替えられるか」と「切り替えて採算が合うか」は、分けて検討することが大切です。

5. 国の制度も変わる可能性

規制強化の動きは、新宿区だけではありません。
各地で問題化しており、よく報道されています。
新宿区長は、特別区長会の21区の区長の連名による「住宅宿泊事業の適正化に関する要望書」を観光庁に提出しています(2026年5月29日)。

報道によると、要望には次のような内容が含まれています。

  • 届出制を、更新制を伴う許可制にする
  • 事業者を国内に住所を有する者に限定する
  • 廃止命令を受けた事業者が、旅館業法で申請できないようにする

新宿区ではすでに、住宅宿泊事業法にもとづく業務停止や廃止命令が出されたと報じられています。
今後は、区の条例に加えて国の法律も厳しくなる可能性があると考えておくべきです。

6. 今やるべきこと|チェックリスト

物件の確認

  • 物件の用途地域を「しんじゅくみんなのGIS」で確認した
  • 物件が文教地区に入っていないか確認した
  • 家主居住型か、家主不在型かを整理

情報の収集

  • 10月に予定されているパブリックコメントの資料を確認する
  • 必要に応じて、パブリックコメントで意見を提出する

出口の検討

  • 禁止区域なら:撤退・賃貸への切り替えなど、猶予期間中の出口を検討する
  • 商業地域などなら:120日で採算が合うか、旅館業への切り替えが可能かを試算する
  • 業務停止などの行政処分を受けないよう、現行ルール(ごみ処理、苦情対応、定期報告など)を守れているか点検する

よくある質問(FAQ)

Q1. すでに届出をして営業中の民泊も、禁止の対象になりますか?
A. 報道された方針では、既存の施設も猶予期間を設けたうえで対象になるとされています。
ただし条例改正はまだ決定しておらず、猶予期間の長さなどは今後公表される区の案で確認が必要です。

Q2. 新宿区の民泊規制は、いつから始まりますか?
A. 報道では、2027年夏の施行を目指すとされています。
2026年10月に意見公募、2027年2月の区議会に改正条例案を提出する見通しです。

Q3. 民泊が禁止されたら、旅館業の許可を取れば営業を続けられますか?
A. 住居専用地域や文教地区では、旅館業(ホテル・旅館)も原則として営めません。
商業地域などでは切り替えが可能な場合がありますが、建築基準法・消防法・区の条例の基準を満たす必要があります。

Q4. 商業地域の民泊は、どう変わりますか?
A. 報道では、営業日数の上限が現行の180日から120日に短縮される方針とされています。

Q5. 自分の物件がどの用途地域にあるか、どう調べればよいですか?
A. 新宿区の地図情報サービス「しんじゅくみんなのGIS」で調べられます。
地域の境目にある場合などは、区の窓口や行政書士に確認してください。

まとめ:条例が決まる前に、自分の物件の「出口」を考える

  • 新宿区は、住居専用地域・文教地区などでの民泊を、既存施設も含めて原則禁止する方針
  • 商業地域などでも、営業日数の上限が180日から120日に短縮される見込み
  • 禁止の対象になる区域では、旅館業への切り替えも原則としてできない
  • 商業地域などでは旅館業への切り替えが選択肢になるが、建築・消防・条例の基準の確認が必要

条例が施行されてから動き出すと、選べる手段が限られます。
猶予期間があるうちに、自分の物件がどの区域にあり、どんな選択肢が残っているかを確認しておくことが大切です。