はじめに
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の第20回公募要領(第7版)が公開されました。
販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者にとって、引き続き活用しやすい制度の一つと位置づけられています。
一方で、申請の現場からは「以前より使い勝手が悪くなったのではないか」という声も聞かれます。
本記事では、第20回の制度概要と第19回からの変更点を公的資料に基づいて整理したうえで、過去の採択率データから今後の採択傾向を予想します。
あわせて、補助金政策全体が中堅・成長志向の企業へ重心を移しつつあるとみられる点についても触れます。
本記事は申請の判断材料を提供するものであり、最終的な可否は事務局の審査によります。
第20回の制度概要
第20回公募要領(小規模事業者持続化補助金事務局公開資料)によると、制度の骨格は次のとおりです。
- 補助上限額: 基本50万円。インボイス特例の対象は50万円上乗せ、賃金引上げ特例の対象は150万円上乗せ、両特例を満たす場合は200万円上乗せ(最大250万円)。
- 補助率: 2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)。
- 対象経費: 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費の8区分。
- 対象者: 商業・サービス業(宿泊・娯楽を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊・娯楽業および製造業その他は20人以下が目安。士業法人や一定要件を満たす特定非営利活動法人なども対象となり得ます。
スケジュールは、公募要領公開が2026年5月27日、申請受付開始が2026年11月5日、申請受付締切が2026年12月15日17時です。
商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は2026年12月4日とされており、本締切より前に商工会・商工会議所へ依頼を済ませておく必要があります。
採択発表は2027年3月頃の予定、補助事業の実施期限は2028年3月31日とされています(いずれも変更の可能性があります)。
申請は電子申請システムでのみ受け付けられ、GビズIDプライムのアカウントが必須です。
アカウント取得には1-2数週間程度を要するため、早めの準備が望ましいと考えられます。
第19回からの主な変更点
「条件が厳しくなった」という印象の背景には、いくつかの実務的な変更があります。
第19回から第20回にかけての主な変更点は次のとおりです。
- 賃金引上げ特例の判定方法の変更:
従来の「事業場内最低賃金を+50円以上とする」方式から、「従業員1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増加させる」方式へと変わります。
従業員数が多いと人件費の上昇が大きくなります。
判定の考え方そのものが変わっているため、過去の知識のまま要件を読み違えないよう注意が必要です。 - 赤字事業者への補助率引上げ:
賃金引上げ特例に申請する赤字事業者は、補助率が2/3から3/4へ引き上げられ、優先採択の対象になります(事業者にとっては有利な変更です)。 - 広報費・ウェブサイト関連費の上限設定:
それぞれ上限30万円(税込)が設けられ、これらの経費“単独”での申請ができなくなります。 - 相見積の基準引下げ:
2者以上の相見積が必要となる発注総額の基準が、100万円超から50万円超(税込)へ引き下げられます。
事務負担が増す方向の変更です。
補助上限が最大250万円という数字は変化がありませんが、賃上げ要件の厳格化や経費区分ごとの上限設定、相見積基準の引下げなど、申請のハードルや事務負担に関わる部分で条件が厳しくなりました。
採択率の推移と今後の予想
採択傾向を予想するうえで欠かせないのが、過去の採択率の推移です。
近年の一般型・通常枠の採択率はおおむね次のように推移してきました。
- 第14回:約62%
- 第15回:約42%
- 第16回:約37%
- 第17回:約51%
- 第18回:約48%
なお、第19回(2026年4月締切)の採択結果は未発表(2026.6時点)です。
以前は60%程度の採択率でしたが、この2年は40%程度で推移しており採択が厳しくなってきています。
過去に採択され、2,3回目の申請は必ず減点されますが、最近はこの減点が大きくなってきているようです。
第20回も同様な傾向が見られると思いますが、諸条件が厳しくなってきたため、申請数が減少するかも知れません。
特に、「広報費・ウェブサイト関連費の上限30万円」の壁(条件)で少々魅力度が低下すると思われます。
政策全体の流れ:「小規模」から「成長志向」へ?
近年、国の補助金政策は、より規模が大きく成長志向の強い企業を後押しする方向にも力を入れ始めているとみられます。
その象徴が、中小企業庁・中小機構が実施する「中小企業成長加速化補助金」です。
中小機構の案内などによれば、これは売上高100億円を目指す中小企業(おおむね売上高10億円以上100億円未満が対象とされる)の大規模投資を支援する制度で、補助上限は最大5億円とされています。
「100億宣言」を行った成長志向の企業を対象に、大胆な設備投資・海外展開・M&Aなどを支援する設計です。
さらに「10億円宣言」も最近追加され、売上1億円以上の事業者に対する支援が強化されつつあります。
こうした大型補助金の登場は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者を支援する持続化補助金の意義を否定するものではありません。
両者は対象も目的も異なる制度です。
もっとも、限られた予算の配分という観点でみれば、成長余力の大きい企業への重点支援が強まる中で、小規模事業者向けの制度では「より計画の質が問われる」傾向がさらに強くなると考えられます。
小規模事業者にとって重要なのは、こうした流れを過度に悲観することではなく、自社の経営計画を磨き込み、補助金を「資金調達」よりも「経営戦略の実行支援」として位置づける視点だと考えられます。
市場・顧客ニーズの分析、自社の強み・弱みの把握、売上高・売上総利益の増加見込みの根拠づけといった、審査の観点に沿った計画づくりが、これまで以上に採択の鍵を握りそうです。
まとめ
第20回の小規模事業者持続化補助金は、補助上限の枠組み(最大250万円)こそ維持されているものの、賃上げ要件の厳格化、経費区分ごとの上限設定、相見積基準の引下げなど、申請の「中身」では慎重さが増しています。
採択率も近年は40%前後で推移しており、計画の質が問われる局面が続いていると考えられます。
申請を検討される場合は、(1) GビズIDの早期取得、(2) 様式4発行のための商工会・商工会議所への早めの相談、(3) 審査の観点に沿った計画書の作成、の3点を軸に、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることをおすすめします。
制度は今後改定される可能性があります。
申請時には必ず最新の公募要領(商工会地区・商工会議所地区それぞれの事務局ホームページ)をご確認ください。
