「蛍光灯なんて、まだ普通に売ってるし大丈夫でしょう」
——経営者の方とお話ししていると、こうした反応にたびたび出会います。
しかし実際には、2027年末をもって一般照明用の蛍光灯は製造・輸出入ともに全面禁止となることが国際的に決定しており、猶予は残りわずかです。

本記事では、まず「実際どのくらいの企業がLED化を終えていないのか」を客観的なデータで確認したうえで、なぜ経営者の危機感が制度の進行スピードに追いついていないのかを整理します。
そのうえで、東京都・区市町村で活用できる補助金制度についても解説します。

蛍光灯2027年問題とは何か

2023年11月に開催された「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議(COP5)」において、水銀を含む一般照明用蛍光ランプについて、種類ごとに段階的な製造・輸出入禁止のスケジュールが合意されました。
電球形・コンパクト形蛍光灯は2025〜2026年末にかけて、オフィスや工場で広く使われている直管形・環形蛍光灯は2027年末までに、それぞれ製造・輸出入が禁止されます。

この規制は「今使っている蛍光灯をすぐに使えなくする」というものではなく、あくまで新規の製造・輸出入を禁止するものです。
しかし、パナソニックや東芝ライテックといった主要メーカーが、規制に先立って蛍光灯の生産終了時期をすでに発表しており、今後は流通在庫にも限りが出てくることになります。

つまり、「規制が始まる2027年末」ではなく、その手前の段階で、蛍光灯そのものが「品薄」「入手困難」「価格高騰」という形で経営に影響を及ぼし始める可能性が高いということです。

データで見る「まだ4割が未対応」の実態

ここからが、経営者にこそ知っていただきたいポイントです。

日本照明工業会の調査によると、既設照明のLED化率は2023年度時点で約59.5%とされています。
裏を返せば、全体の4割前後は依然として蛍光灯など旧来の照明のままという計算になります。

さらに、産業用途に絞るとこの数字はより厳しくなります。
工場に限定した調査(2021年3月時点)では、LED普及率は45%にとどまり、事業規模の小さな企業ほど普及が遅れている傾向が指摘されています。
中小企業の工場・作業場においては、未LED化の割合が過半数に達している可能性も十分に考えられます。

制度そのものへの認知度も、決して高いとは言えません。
2026年3月に実施された一般消費者向けの調査(パナソニック調べ、7,780人対象)では、蛍光灯の製造・輸出入禁止について「聞いたことがない」と回答した人が約3人に1人(36.5%)にのぼりました。

制度を知った後でも、「具体的にLEDへの交換を検討している」人はわずか8.8%にとどまり、「今付いている照明が切れたら交換を考える」という消極的な姿勢の人が24.6%を占めています。

これらの数字が示しているのは、「経営者の体感」と「制度が進むスピード」の間に、かなりのギャップがあるという事実です。
多くの企業にとって、照明設備への投資は空調や生産設備に比べて優先順位が低く見られがちですが、選択の猶予はすでに終盤に差し掛かっています

「まだ大丈夫」が危険な、もうひとつの理由

蛍光灯を使い続けること自体には、実は別のリスクも指摘されています。

照明器具には本来「適正交換時期」が存在し、これを超えて使い続けた場合、発煙・発火などのリスクが高まるとされています。
前述のパナソニック調査でも、この寿命の存在自体を知らない人が3人に1人、発煙・発火リスクを知らない人は半数を超えるという結果が出ています。

つまり「まだ点いているから大丈夫」という判断は、①今後の入手困難リスク、②価格高騰リスク、③老朽化による事故リスクという、少なくとも3つの観点から見直しが必要ということになります。
特に、複数店舗・工場・オフィスを運営する事業者にとっては、照明台数が多いほど切り替えの工事期間も長くなるため、「まだ先の話」ではなく「今から逆算して動くべき話」だと捉えていただきたいところです。

LED化にかかる費用負担を抑える:東京都・区の補助金

LED化を先延ばしにする最大の理由は、初期投資の負担にあります。

そこで活用したいのが、東京都および区市町村が実施している補助金制度です(本記事執筆時点の情報です。制度は年度ごとに内容・スケジュールが変わるため、実際の申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください)。

東京都「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」(通称:ゼロエミ補助金

都内の中小規模事業所を対象に、クール・ネット東京(東京都地球温暖化防止活動推進センター)が実施している制度です。
LED照明のほか、業務用空調や変圧器(キュービクル)なども対象に含まれます。

  • 補助率・上限
    最大3/4、上限4,500万円という、中小企業向けとしてはかなり手厚い制度です
  • 審査方式
    申請期間は数週間程度と短く、予算を超える応募があった場合は先着順ではなく抽選となる点に注意が必要です
  • 申請のハードル(書類作成が難)
    省エネ効果の算定など専門的な書類作成が求められるため、自社のみでの申請は難易度が高い制度です
    専門家泣かせの書類もあるため、依頼を受けられる専門家が限られます

補助率の高さは魅力ですが、「申請期間が短い」「抽選になる可能性がある」「計算書類の作成が煩雑」という3つのハードルがあるからこそ、早めの情報収集と専門家によるサポートの価値が大きい制度だと言えます。

区市町村の省エネルギー・創エネルギー機器等補助制度

新宿区をはじめ、都内の複数の区市町村で、事業所を対象とした省エネ・創エネ機器の導入補助制度が実施されています。
太陽光発電、蓄電池、高効率空調などと並んで、LED照明も対象設備に含まれるケースが一般的です。
再生可能エネルギー由来の電力契約をしている事業所は、補助率がさらに引き上げられる制度になっている自治体もあります。

区市町村の制度で特に注意していただきたいのは、募集期間・締切が自治体ごとに大きく異なります。
年度当初から通年に近い形で募集している区もあれば、夏から秋にかけて早々に締め切ってしまう区もあります。
複数の店舗・事業所を都内の異なる区に構えている事業者の場合、「どの区の制度がいつまでか」を一つひとつ確認する必要がありますので、是非とも専門家に依頼してください。

補助金活用における注意点

補助金を検討する際は、以下の点を必ず押さえておいてください。

  • 同一の設備・同一の経費に対して、複数の補助金を重複して受給することは、原則としてできません
  • 交付決定前に発注・契約・着工してしまうと、対象外となる制度がほとんどです。見積りを取る前に、まず申請要件を確認するという順番が重要です
  • 賃貸物件の場合、施工についてオーナー(所有者)の承諾が必要になるなど、所有形態によって申請要件が変わることがあります

LED化を計画的に進めるための進め方

  1. 自社の照明設備を棚卸しする(蛍光灯か、すでにLEDか、器具の設置年数)
  2. 優先順位をつける(老朽化が進んでいる箇所、照明台数が多く一括工事が有利な箇所から)
  3. 活用できる補助金の候補を洗い出す(都・区それぞれの制度、締切、対象要件)
  4. 交付決定前に発注・契約をしないよう、スケジュールを逆算する
  5. 専門業者による現地調査を経て、正式な見積り・申請書類を準備する

よくある質問(FAQ)

Q. 今使っている蛍光灯は、すぐに使えなくなりますか?
A. いいえ。規制の対象は「今後の製造・輸出入」であり、現在使用中の照明をすぐに使えなくするものではありません。
ただし、蛍光ランプの流通在庫がなくなれば、故障・寿命時の交換用ランプが入手できなくなる可能性があります。

Q. LED化と補助金は、どちらから先に検討すべきですか?
A. 補助金の対象要件(対象設備の性能水準、申請〜交付決定までのスケジュールなど)を先に確認することをおすすめします。
交付決定前に発注を行うと、対象外になる場合が多いためです。

Q. 複数の補助金を併用できますか?
A. 同一の設備・経費に対して複数の補助金を重複して受給することは、原則としてできません。(不正受給となります)
どの制度を使うか、事前の比較検討が重要です。

まとめ

蛍光灯の製造中止は、遠い未来の話ではありません。

データを見る限り、多くの中小企業でLED化はまだ道半ばであり、「気づいたときには蛍光灯が手に入らない」という事態も現実味を帯びています。

一方で、東京都・区市町村の補助金を活用すれば、初期費用の負担を大きく抑えながら計画的にLED化を進めることが可能です。

当事務所では、認定支援機関として、補助金の対象要件の整理から申請書類の作成まで一貫してサポートしております。
東京都のゼロエミ補助金もサポート可能です。
「うちの場合、どの制度が使えるのか分からない」という段階でも、まずは現状の整理からご相談ください。