省力化投資補助金〈一般型〉の第8回は、2026年9月18日(金)10:00に申請受付が始まり、10月16日(金)17:00が締切です。
第9回の日程は、本記事の作成時点(2026年9月21日)では公表されていません。

この補助金でつまずきやすいのは、実は「採択」ではありません。
採択後には交付申請、発注・支払い、実績報告、そして5年間の効果報告が続きます。

当事務所がこれまで支援してきた中でも、採択までは順調だったのに、この採択後の実務負担の大きさから事業を断念されたケースを複数見てきました。

本記事では、第8回に出すか次回に備えるかの判断と、採択後まで含めた実務を、公募要領に沿って整理します。

1. 第8回に出すか、第9回以降に備えるか

締切まではおよそ4週間です。次の表で、自社の状況を確認してみてください。

確認項目第8回に申請できる状態第9回以降が現実的な状態
省力化の根拠対象工程の作業時間を実測し、削減効果を数字で示せる削減効果を数字で説明できない
見積50万円以上の設備は同一条件の相見積を取得できる仕様が固まらず、システム開発が「一式」見積のまま
GビズIDプライムアカウントを取得済み未取得(取得に2〜3週間程度かかるとの情報があります[7])
賃上げ1人当たり給与支給総額の年平均3.5%以上の増加を実行できる見通しがある賃上げの原資に見通しが立たない
納期交付決定から17か月以内に納品・支払いを完了できる納期の長い設備で、期間内に収まらない可能性がある
資金繰り・実務体制補助金は精算払いのため、立替資金と採択後の事務負担に対応できる立替資金や、交付申請以降の実務にあてる人手が未定

判断の際は、応募の順番にも注意が必要です。
事務局は、応募申請中・交付申請中の事業者と、交付決定後に補助金の支払いが完了していない事業者は申請できません。

第8回に応募すると、結果が出るまで第9回には応募できません。
一方、不採択となった事業は再度申請できます。

2. 第8回公募の要点

項目内容
公募開始2026年8月18日(火)
申請受付2026年9月18日(金)10:00〜
締切2026年10月16日(金)17:00
採択発表2027年2月上旬(予定)

補助率は中小企業が1/2、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者が2/3です。
補助上限額は従業員数で異なり、括弧内は大幅賃上げの特例を適用した場合です。

従業員数補助上限額
5人以下750万円(1,000万円)
6〜20人1,500万円(2,000万円)
21〜50人3,000万円(4,000万円)
51〜100人5,000万円(6,500万円)
101人以上8,000万円(1億円)

第7回からの主な変更点は次のとおりです。

  • 基準年度の変更
    労働生産性などの伸び率の基準が、「応募申請時の直近決算期」から「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」に変わりました。
  • 足下の賃上げの評価
    応募申請時の直近決算期から基準年度までの賃上げが物価上昇率を上回る程度に達しない計画は、審査上大幅に不利になると明記されました。
    採択後、交付決定までに従業員への表明も必要です。
    補助事業終了後だけではなく、応募申請時から賃上げを実施しないと採択が難しくなります。
  • 実施期間の短縮
    交付決定日から18か月以内が17か月以内に、採択発表日からは20か月後が19か月後までに短縮されました。
  • 事業場内最低賃金の加点基準
    2026年6月と比べて55円以上の引き上げが基準になりました(第7回は63円)。
  • リース共同申請
    応募時に申告した場合、交付申請段階で取りやめることはできません。

3. 回が変わっても押さえたい基本要件と返還リスク

基本要件は、3〜5年の事業計画で次のすべてを満たすものです。

  1. 労働生産性を年平均4.0%以上向上させる。
  2. 1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上増加させる。(重要!!)
  3. 事業場内最低賃金を、事業実施都道府県の最低賃金+30円以上に保つ。
  4. 従業員21名以上は、一般事業主行動計画を公表する(掲載に2週間程度かかります)。

このうち給与の目標が未達の場合、達成率に応じて補助金の返還を求められます。

返還額は「(補助金交付額-上限引き上げ額)×(1-達成率)」で、年平均成長率が0%以下なら全額返還です。
仮に、特例なしで交付額1,000万円、目標3.5%に対して実績2.8%(達成率80%)なら、返還額は200万円になる計算です(数値は説明のための仮定です)。
ただし、付加価値額が増えず、かつ計画期間の過半数が営業利益の赤字といった場合や天災などは、返還を求められないとされています。

賃上げの目標は、採択を得るためだけに高く設定すると返還リスクを抱えます。
自社の収益計画と整合する水準で計画を策定することが重要です。

4. 本当の関門は採択後:交付申請・実績報告・効果報告

採択は、交付額の確定ではありません。
交付申請で内容が改めて精査され、対象外経費が含まれていれば減額や全額対象外になることがあります。
採択後の流れは次のとおりです。

段階主な内容期限
採択後の研修研修動画の視聴と確認テスト(視聴しない場合は採択が無効交付申請前
交付申請見積書(相見積)、賃金引き上げ計画の表明書、実施場所の登記事項証明書や賃貸借契約書、研修修了証、システム構築費の明細など採択発表日から2か月後の日(期限内に申請がなければ採択取消)
事業実施交付決定日以降に発注し、納品・検収・銀行振込での支払いまで完了交付決定日から17か月以内、かつ採択発表日から19か月後まで
実績報告事業完了の報告と証憑の提出完了日から30日を経過した日と事業完了期限日のいずれか早い日まで
額の確定・精算払い現地調査と証憑確認を経て、補助金額が確定実績報告後
効果報告賃金台帳を含む報告を毎年提出事業計画1年目終了後の最初の4月から5年間

この段階でつまずきやすい点を挙げます。

  • 事前着手は認められません
    交付決定前に発注や契約をした経費は、いかなる理由でも対象外です。
  • 支払い方法に制限があります
    原則として銀行振込で、代行振込は認められません。
  • システム構築費は証憑が重く大変
    実績報告時に、要件定義書、または作業単価・工数などがわかる開発費用算出資料の提出が必要です。
  • 保険・共済への加入が原則必須
    導入した機械装置について、付保割合50%以上の保険または共済に、事業計画期間の終了まで加入します。
  • 保守契約と処分制限
    システム構築費を計上する場合は3〜5年の保守・メンテナンス契約が必要です。単価50万円以上の財産には処分制限があります。
  • 補助金は課税対象
    経理上、収入として計上し、法人税等の課税対象になります。
  • 効果報告は5年間続きます
    交付を受けて終わりではなく、賃金台帳の提出を含む報告を毎年、事務局の定める期限までに行う必要があります。
    未報告や虚偽報告があれば返還を求められます。

採択発表から交付申請までは2か月しかなく、そこから納品・検収・支払いまでを17か月以内に終える必要があります。
社内に専任の担当者を置きにくい中小企業ほど、この事務負担で計画が挫折しやすいのが実情です。

5. 第9回以降はどうなるか

現時点で確認できることと、そうでないことを分けます。

  • 確認できること
    一般型の公募は年3〜4回の予定で、第9回のスケジュールは詳細が確定次第、事務局が更新するとされています。
  • 確認できないこと
    第9回の日程や内容は未公表です。
    直近の締切は5月15日(第6回)、7月31日(第7回)、10月16日(第8回)と約2.5か月おきでしたが、第9回の時期はこれからの発表を待つ必要があります。
  • 制度の動き
    中小企業庁の令和9年度概算要求のポイントには、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」が掲載されています。
    デジタル化・AI導入補助金との一本化は報道ベースで、要求段階の内容が予算や公募にそのまま反映されるとは限りません。
  • ルールの変わりやすさ
    第6回では投資回収期間の計算式の変更や加点・減点項目の追加、第7回では歯科医業を営む医療法人の対象化、第8回では基準年度の変更がありました。

第9回以降は、ルールが変わり得ることを前提に、計画を柔軟に組める状態にしておくのが現実的です。

6. 次回に向けた準備:加点の仕込みを含めて

加点項目は10種類あります。
次の項目は、準備に時間がかかるものも多く、第8回に間に合わなくても次回以降に活きます。

  • 省力化ナビの活用
    応募申請に使うGビズIDプライムと同じIDで利用する必要があります。
  • 生産性向上支援センターの支援
    2026年4月に全国のよろず支援拠点内に設置され、「生産性向上取組計画書」を作成して提出すると加点されます。
    大幅な加点が期待できますが、支援完了まで長期間掛かります。
  • 事業継続力強化計画の認定
  • えるぼし認定、くるみん認定、健康経営優良法人2026の認定
  • 成長加速マッチングサービスへの登録
  • 事業承継・M&A
    過去3年以内に事業承継(株式譲渡等)で経営資源を引き継いだ事業者が対象です。

あわせて、対象工程の作業時間の実測、相見積の取得、賃上げ計画の前倒しも進められます。
ただし、賃上げの加点を受けて採択されたのに要件を達成できなかった場合、その後18か月は中小企業庁所管の補助金で大幅に減点されます。
加点のために実行できない約束をするのは避けるべきです。

7. 業種別の向き不向き(建設業・宅建業・サービス業)

第6回の採択構成比は、製造業が51.4%、建設業が14.6%となっています。
補助金の目的から見ると、製造業中心の制度であり、他業種では省力化効果の説明をより丁寧に行う必要があります。

  • 建設業
    AI機能を搭載した工事見積の自動作成システムが、積算から見積作成までの工数削減として紹介されています。
  • サービス業
    予約・受付業務の自動化が、採択された取り組みとして紹介されています。

8. 専門家の選び方と、当事務所の伴走支援

公募要領は、事業計画は申請者自身が作成し、電子申請も申請者自身が入力するものなっています。

外部の支援を受けた場合は、支援者名、報酬額、契約期間の記載が必須です。
過大な成功報酬を求める業者には注意するよう促されています。

一方、採択後の交付申請と実績報告は負担が大きく、専門家の支援が効きやすい場面です。
公募要領上も、交付申請に限っては委任による代理申請の仕組みが用意されています。

当事務所は認定経営革新等支援機関であり、行政書士として行政庁への提出書類作成を適法に行える立場から、応募段階だけでなく採択後まで一貫した伴走支援を行っています。

段階支援内容
応募前要件の診断、省力化の根拠と賃上げ計画の整理、第8回か次回かの判断
応募事業計画書・添付書類の作成支援(電子申請の入力と提出は事業者ご自身)
採択後交付申請書類の作成と手続き、発注から支払いまでの証憑管理の助言、実績報告書類の作成
その後5年間の効果報告と賃金台帳の準備、返還リスクの点検、次回の申請計画

これまで多くの事業者様が、採択後の交付申請や実績報告の煩雑さ、5年間続く効果報告の負担から、途中で事業を断念されるのを見てきました。

当事務所は「採択して終わり」ではなく、補助金の入金、さらにその後の効果報告まで伴走することを支援の軸にしています。

「自社は第8回に間に合うのか」「採択後の実務まで見据えて相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. 第8回で不採択になった場合、第9回に再申請できますか。
不採択となった事業は再度申請できます。
ただし第9回の日程は未公表で、その申請〆切スケジュールによります。

Q2. 採択後に交付申請をしなかった場合はどうなりますか。
交付申請は採択発表日から2か月後までが原則で、期限内に申請がなければ採択は取り消されます。
やむを得ない事由がある場合は、事前に事務局へ連絡して理由書を提出してください。
理由書、取下書を提出しないと、今後の補助金申請に影響しますので必ず行ってください。

Q3. カタログ注文型との違いは何ですか。
カタログ注文型は、国が省力化効果を認めた製品を対象とし、申請が迅速で簡易とされています。
一般型は個別の現場に合わせた設備・システムが対象で、審査項目が多くなります。
公募要領は、一般型を検討する前にカタログの確認を求めています。

Q4. 従業員が0名でも申請できますか。
応募時点で従業員が0名の事業者は応募できません

Q5. 採択後の報告義務は自社だけで対応できますか。
公募要領上は可能ですが、証憑の管理や賃上げ実績のモニタリングなど、5年間にわたる継続的な事務が発生します。
社内の担当体制によっては、交付申請以降を専門家に依頼する事業者が少なくありません。

まとめ

第8回の締切は10月16日で、第9回の日程は未公表です。
出すか待つかは、省力化の根拠、見積、賃上げ、納期、資金繰りと実務体制で判断できます。

補助金の本当の負担は採択後にあります。
交付申請・実績報告・5年間の効果報告まで見通して、計画を立てることが重要です。

制度は回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認してください。