「採択率が高い行政書士に頼みたい」
——補助金の申請を検討する中で、そう考える経営者の方は少なくありません。
実際、「採択率90%」「採択実績多数」といった打ち出し方をしている専門家サイトも見かけます。

結論を先にお伝えすると、採択を保証できる専門家は存在しません。
補助金の採択は、公募要領に基づいて審査機関が総合的に判断するものであり、専門家に依頼したという事実だけで結果が決まるものではないためです。

その上で、行政書士が採択の可能性に対して実際に貢献できる部分と、できない部分は明確に分けて考える必要があります。

この記事では、審査で実際に見られている観点を整理しながら、依頼を検討する際に何を基準にすべきかを、認定経営革新等支援機関としての実務経験からお伝えします。

「採択率が高い行政書士」は実在するか

まず、「採択率○%」という数字の見方について触れておきます。

個別事務所が公表する採択率の注意点

事務所が独自に公表する「採択率」は、算出方法が統一されているわけではありません。
たとえば、

  • 明らかに要件を満たさない案件を最初から受任しない事務所は、必然的に採択率が高く見えます
    (一方、審査に通りそうもない案件でも受任する専門家もいますが、当然、採択率は低くなります)
  • 依頼件数(母数)が少なければ、数件の結果で採択率が大きく上下します
  • 「着手した案件」と「実際に申請まで至った案件」のどちらを母数にするかでも数字は変わります

これらは数字が虚偽というわけではありませんが、事務所間で単純比較できる性質のものではない、という点はご理解いただく必要があります。

公的機関が発表する採択率との違い

一方、中小企業庁や各補助金事務局が公表する採択率は、公募回ごとの申請件数・採択件数に基づく制度全体の数字です。
こちらは客観性の高いデータですが、「特定の専門家に依頼した場合の採択率」を示すものではありません。

小規模事業者持続化補助金の採択傾向については、公式発表に基づいてこちらで詳しく分析しています。
 → 小規模事業者持続化補助金 第18回採択の傾向分析と対策

審査で実際に見られている観点

「採択率」という数字そのものより重要なのは、審査で何が評価されているかを理解することです。
多くの補助金に共通する観点として、以下が挙げられます(制度により詳細は異なります)。

事業計画の実現可能性

売上見込みや投資回収の計画が、具体的な数値と根拠を伴っているか。
抽象的な計画よりも、裏付けのある計画の方が評価されやすい傾向があります。

自社の経営課題と補助事業の整合性

「なぜこの投資が必要なのか」が、自社の現状分析と一貫した形で説明されているか。
補助金ありきで無理に事業内容を作文したような計画は、審査官にも見抜かれやすいポイントです。

加点項目の該当状況

賃上げ計画の表明、事業継続力強化計画の認定取得、DX推進の取り組みなど、公募要領で定められた加点項目に該当するかどうかは、採択の可能性に直接影響する要素です。
該当するにもかかわらず、書類上で正しくアピールできていないケースは実務上よく見られます。

決算書・財務状況との整合性

赤字であることが直ちに不利になるとは限りませんが、計画と実態に矛盾があると評価を下げる要因になり得ます。
決算書のどこが見られているかについては、こちらで詳しく解説しています。
 → 補助金申請で決算書のどこがチェックされているか

行政書士が採択可能性を高めるためにできること

上記の審査観点を踏まえ、行政書士が実務として貢献できるのは主に以下の部分です。

事業計画を審査官に伝わる形に構成する

経営者の頭の中にある構想やノウハウは、必ずしも文章として整理された状態にはなっていません。
それを審査官が短時間で理解できる形(構成・数値の見せ方・根拠の提示順序)に整えることは、専門家が貢献できる領域です。

加点項目の漏れを防ぐ

公募要領は数十ページ、場合によっては百ページ超に及ぶことも珍しくなく、加点項目や要件を見落としたまま申請してしまうケースは少なくありません。
該当する加点項目を漏れなく反映することは、地道ですが採択可能性に直結する作業です。

形式不備による足切りを防ぐ

必要書類の不足や記載不備により、内容以前の段階で審査対象から外れてしまうケースがあります。
要件との整合性を事前に確認することは、専門家に依頼する実務的なメリットの一つです。

行政書士にもできないこと

ここは誠実にお伝えする必要があります。

事業内容そのものの独自性・市場性を作ることはできない

書類の見せ方をどれだけ工夫しても、事業自体に実現可能性や独自性が乏しければ、採択には至りにくいのが実情です。
行政書士ができるのは「伝わる形にすること」であり、「事業の中身を作ること」ではありません。

かつては、一部の専門家(行政書士以外)が架空の事業内容を作成し申請していた事実もありました。(当然、不採択です)

赤字や実績不足を書類上だけで解消することはできない

財務状況が厳しい場合、それ自体を書類の工夫だけで覆すことはできません。
ただし、計画性や今後の見通しを誠実に示すことで、状況を正しく伝える手伝いはできます。

審査基準・採択枠は外部要因に左右される

採択率は公募回によって変動します。
申請件数が多い回は相対的に採択されにくくなるなど、専門家の関与とは無関係な外部要因が結果に影響することも珍しくありません。

ここで正直に書くのは、「採択率が上がります」と強調する情報が世の中に多い中で、実際の審査の仕組みを正確にお伝えすることが、結果的に依頼を検討される方にとって一番役立つと考えているためです。

採択率よりも見るべき依頼先選びの基準

以上を踏まえると、「採択率」という数字だけを基準に依頼先を選ぶことには限界があります。
むしろ以下の点を確認されることをおすすめします。

  • 自社が活用したい補助金の種類について、対応実績があるか
  • 採択後の交付申請・実績報告まで対応してくれるか(採択がゴールではなく、実際に受給できるかどうかが最重要です)
  • 認定経営革新等支援機関としての認定を受けているか

これらの基準や、行政書士に依頼できる業務範囲の全体像については、こちらでまとめて解説しています。
 → 補助金申請は行政書士に頼める?対応範囲・費用相場・採択率を上げるコツ

よくある質問(FAQ)

Q. 「採択率90%」のような表示をしている事務所は信頼できますか?
A. 数字自体が誤りとは限りませんが、算出方法(母数の取り方)が事務所によって異なるため、単純に比較することは難しい点にご留意ください。
実績の中身(どのような案件を、どの段階から支援したか)を確認されることをおすすめします。

ちなみに、当事務所も採択率を公開していますが、申請サポートの受任件数を母数とし、そのうち採択から実績報告までのサポートを採択1件としてカウントしています。

Q. 不採択の場合、費用は発生しますか?
A. 料金体系は事務所によって異なります。着手金と成功報酬を分けている事務所、成功報酬のみの事務所など様々なため、契約前に必ず確認してください。

Q. 何度も不採択になっている場合、依頼先を変えると採択率は変わりますか?
A. 事業計画の構成や加点項目の反映方法に改善の余地がある場合、専門家の関与によって変化する可能性はあります。
ただし、事業内容自体の見直しが必要なケースもあるため、まずは不採択の理由を丁寧に振り返ることが重要です。(根本的に要件を満たしていない場合は、依頼先を変更しても採択されません)

Q. 採択率が高い補助金・低い補助金はありますか?
A. 各種補助金、同じ補助金でも公募回によって採択率は大きく異なります。
公的機関が発表する公募回ごとの採択結果を確認することで、制度全体の傾向を把握できます。

自社が対象になるか、まずは客観的に確認したい方へ

「採択率」の数字に惑わされず、自社の状況が補助金の審査観点にどう当てはまるのか、客観的に整理したいという方は、お気軽にご相談ください。
誇張のない現実的な見立て(採択可能性)をお伝えした上で、申請をサポートいたします。