「黙っていればわからない」という思い込み
専任宅建士の名義貸しについて、「お互いに口をつぐんでいれば、発覚しないのでは」と考える方は少なくないようです。
しかし実態としては、名義貸しは複数のルートから明らかになり得る構造の中にあり、「バレない前提」で続けることには大きなリスクが伴うと考えられます。
本記事では、名義貸しがどのような経緯で発覚し得るのかを整理します。
発覚の仕組みを知ることは、「だからこそ手を出すべきではない」という判断材料になりますし、すでに不安を抱えている方が早めに適法な状態へ立て直すきっかけにもなると思います。
なお、罰則の重さや適法な解決策については関連記事で扱います。
なぜ「実態の不在」は見えてしまうのか
そもそも専任宅建士は、その事務所に常勤し、その業務に専従していることが前提とされています。
つまり、勤務している人なら当然に残るはずの「実態の痕跡」が、名義貸しの場合にはその痕跡がありません。
給与の支払い、社会保険の加入、日々の勤務記録、顧客対応の履歴
——本来あるべきこれらの痕跡が欠けていたり、別の事実と食い違っていたりすると、整合性の取れない点として浮かび上がります。
名義貸しが発覚しやすいのは、「存在するはずのものがない」という不自然さが、複数の場面で表面化するためだと考えられます。
以下、代表的なルートを見ていきます。
ルート1:行政による立入検査
宅地建物取引業者は、免許を与える行政庁(都道府県知事や国土交通大臣)による監督の対象となります。
その一環として、事務所への立入検査が行われることがあります。
立入検査では、専任宅建士が実際にその事務所で勤務しているか、勤務実態を示す資料が整っているかなどが確認され得ます。
名義だけで実際には勤務していない場合、本人が事務所におらず、勤務を裏づける記録も示せないため、実態の不在が明らかになりやすいとされています。
ルート2:他社や消費者からの通報
発覚のきっかけは、行政の側からだけとは限りません。
取引のトラブルをめぐる消費者からの相談・申告や、業界内の他社からの通報などが端緒になることもあると指摘されています。(実際このパターンがかなり多いようです)
特に、取引に関して何らかの問題が生じた場合、その調査の過程で「重要事項の説明を担当した宅建士が、実は常勤していなかった」といった事実が判明することがあります。
日常的には表面化していなくても、何かのトラブルを契機に一気に明るみに出る、という経路です。
ルート3:免許の更新時・新規申請時の審査
宅建業免許には有効期間があり、更新の手続きが必要です。
また、新たに事務所を設けたり体制を変更したりする際にも、所定の手続きが求められます。
これらの手続きの際には、専任宅建士の常勤性などが審査の対象になるとされています。
名義だけの登録では、常勤性を裏づける資料を整えることが難しく、審査の過程で実態の不備が指摘される可能性があります。
「申請の場面」は、実態が確認される代表的なタイミングの一つだと考えられます。
ルート4:社会保険・労働保険・税務記録との突合
見落とされがちですが、勤務実態は他の公的な記録とも結びついています。
専任宅建士が常勤しているのであれば、通常はその事務所で社会保険に加入していたり、賃金の支払いに伴う各種の届出や記録が存在したりするはずです。
ところが名義貸しの場合、本人が別の会社で社会保険に加入していたり、勤務を裏づける保険・税務上の記録が伴わなかったりすることがあります。
こうした記録どうしを突き合わせると、「専任として登録されているのに、その事務所での勤務実態を示す記録がない」「同時に別の会社で常勤しているように見える」といった矛盾が浮かび上がります。
労働保険の申告内容との照合などを通じて、整合性の取れない点が発覚の糸口になり得るとされています。
「掛け持ち」は特に矛盾が生じやすい
名義貸しの中でも、別の会社で実際に働きながら、形式上だけ他社の専任宅建士として登録しているケースは、とりわけ矛盾が表面化しやすいと考えられます。
専任宅建士は一つの事務所への専従が前提です。
にもかかわらず、二つの会社で常勤しているような記録が併存していれば、物理的に両立しないことは明らかです。
社会保険の加入状況や勤務実態をたどれば、どちらかが実態を伴わないことが見えてきます。
「二重」になっている状態は、それ自体が発覚リスクの高いサインだと言えそうです。
「いつか」ではなく「複数の入り口」がある
ここまで見てきたように、名義貸しの発覚は「運が悪ければいつかバレるかもしれない」という偶発的なものというより、立入検査・通報・申請審査・各種記録との突合という、複数の入り口があらかじめ存在している構造だと捉えるのが実態に近いと考えられます。
しかも、いったん発覚すれば、業者・宅建士の双方に重い処分や刑事罰のリスクが及び得ます。
得られる報酬と釣り合わないリスクであることは、発覚の仕組みを知るほど明確になっていくのではないでしょうか。
不安があるなら、早めの点検を
「すでに名義貸しに近い状態になっているかもしれない」「専任宅建士の体制が実態を伴っているか自信がない」
——そうした不安がある場合は、問題が表面化する前に体制を点検し、適法な状態へ立て直すことが重要です。
早く動くほど、選べる対応の幅も広がります。
当事務所では、専任宅建士の要件確認、宅建業免許の更新・体制整備のご相談を承っています。
「どこから手をつければよいかわからない」という段階からでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
具体的な解決の進め方は、解決編の記事もあわせてご覧いただければと思います。
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