「人がいない」を理由に、道を踏み外さないために

専任宅建士が退職した、募集しても応募が来ない、開業したいが宅建士のあてがない
——こうした「人が確保できない」状況は、決して珍しいものではありません。
だからこそ、つい「名前だけ借りられないか」という発想に傾きやすいのも事実だと思います。

しかし、名義貸しは法律で禁止されており、発覚すれば廃業や資格喪失、刑事罰にまで及び得る行為です。
本記事では、その道に進む前に検討すべき、適法な4つの選択肢を整理します。
「困っているからこそ、正しい打ち手を知る」ための実務的なガイドとしてお読みください。

まず知っておきたい「2週間以内」のルール

具体策に入る前に、時間の制約を押さえておきます。
宅地建物取引業法第31条の3第3項では、既存の事務所等が専任宅建士の設置義務に抵触する状態になったとき、2週間以内に必要な措置を執らなければならないとされています。

つまり、専任が退職した場合などは、補充や体制の調整を速やかに進める必要があります。
この期間を過ぎて放置すると監督処分の対象になり得るため、「いつか対応すればよい」ではなく、退職の連絡を受けた時点ですぐ動き出すことが重要だと考えられます。

焦りが名義貸しという誤った選択を招かないよう、選択肢をあらかじめ知っておくことが助けになります。

選択肢1:経営者・役員自身が宅建士資格を取得する

最も根本的な解決につながり得るのが、経営者自身が宅建士資格を取得する方法です。

宅地建物取引業法では、個人の宅建業者本人や、法人の役員が宅地建物取引士である場合、その者は成年者である専任の宅建士とみなされる扱いがあるとされています。
つまり、経営者や役員が資格を持っていれば、外部から人を探さなくても専任要件を満たせる可能性があるということです。

短期的にはすぐ実現できない方法ですが、人材確保に継続的に苦労している事業者にとっては、最も安定した土台になり得ます。
中長期の視点で、経営層の資格取得を計画に組み込んでおくことは、有力な選択肢だと考えられます。

選択肢2:常勤・専従の実態を伴う正規雇用で確保する

次に基本となるのが、常勤性・専従性の実態を伴う形で宅建士を正規に雇用する方法です。
これは専任要件を適法に満たす、いわば王道の打ち手です。

ポイントは「実態を備えること」です。
通常の営業時間に勤務し、他社の役員や勤務を兼ねていない状態を保ち、事務所の業務に実際に従事してもらう
——こうした実質が伴っていれば、立入検査や免許更新の際にも問題が生じにくいとされています。

雇用契約の形式を整えるだけでなく、勤務実態を裏づけられる体制(勤務記録や社会保険の加入など)まで含めて整えることが大切です。

選択肢3:求人の出し方・条件を工夫して人材を呼び込む

「募集しても来ない」という場合、求人の出し方そのものを見直す余地があるかもしれません。

たとえば、宅建士資格の取得を支援する制度(受験費用の補助や学習時間への配慮など)を打ち出し、「入社後に資格取得を目指せる」形で人材を呼び込む方法があります。
資格保有者の獲得競争が厳しい地域では、有資格者を直接探すだけでなく、「資格取得を後押しする職場」として母集団を広げる発想が有効な場合があります。

また、給与・勤務条件・働き方(勤務地や時間の柔軟性など)を競合と比較して見直すことも、応募を増やす現実的な手立てになり得ます。
採用は時間がかかるため、選択肢2と並行して早めに着手しておくことが望ましいと考えられます。

選択肢4:事業計画・拠点構成を見直す

人を増やすのではなく、必要な専任宅建士の人数そのものを無理のない形に調整するアプローチもあります。

専任宅建士の必要数は、事務所ごとに「業務に従事する者」の数に応じて決まり、事務所では5人に1人以上が求められるとされています。
そのため、事務所の数や従事者の配置、新たな拠点を開設するタイミングなどを見直すことで、現実的に満たせる体制を組める場合があります。

たとえば、「新規拠点の開設を、専任宅建士を確保できる見通しが立ってからにする」「従事者の配置を調整する」といった計画段階での工夫が、後の無理な対応を避けることにつながります。
事業の拡大計画と免許要件をセットで設計しておくことが、安定経営の土台になると考えられます。

4つの選択肢は「組み合わせて」考える

これらの選択肢は、どれか一つだけを選ぶというより、組み合わせて考えるのが現実的です。
たとえば、「当面は選択肢2・3で採用を進めつつ、中長期では選択肢1で経営層の資格取得を計画し、拡大は選択肢4で無理のないペースに調整する」といった具合です。

共通して大切なのは、いずれの方法でも「実態として専任である」ことを客観的に示せる体制を整えることです。
形式だけを整えても、実態が伴わなければ名義貸しと同様に扱われるリスクが残ります。
逆に、実質を備えた体制を築けば、検査や更新の場面でも安心して臨めます。

困ったら、早めに専門家へ相談を

専任宅建士の確保は、多くの事業者が直面する共通の悩みです。
大切なのは、焦って名義貸しという誤った道に進まず、適法な選択肢の中から自社に合った打ち手を早めに選ぶことです。
2週間以内という時間の制約もあるため、迷っている時間が長いほど選べる手は狭まっていきます。

当事務所では、宅建業免許の新規取得・更新の支援、専任宅建士の要件確認、体制整備のご相談を承っています。
「専任が辞めてしまって2週間以内にどうすればよいか」「どの選択肢が自社に向いているか」といった具体的なご相談から、開業計画の段階でのご相談まで対応しています。
免許を守りながら事業を続けるための現実的な進め方を、行政書士の立場でご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

関連記事

宅建業免許(実務解説)コラム

▲宅建業免許関連のコラム一覧もご参照ください