はじめに

ウェブサイトで見つけた「行政書士法人」に、建設業許可の更新や業種追加を頼もうとしていませんか。

2026年10月14日、富山県と国土交通省北陸地方整備局が、行政書士法人を名乗るサイトの運営者を、公文書偽造などの疑いで告発したと報じられました。
この記事では、報道された事案を整理したうえで、依頼前に確認したい点、許可通知書が届いた後の確かめ方、被害に気づいた時の対応をまとめます。

なお、本記事は報道に基づく解説です。事案はいずれも疑いの段階で、特定の個人・法人を指すものではありません。(2026年10月15日時点の情報です)

この記事の要点

  1. 「行政書士かどうか」に加えて、法人の実在、費用の内訳、入金先、許可の真偽まで確認する。
  2. 許可通知書が届いても安心せず、許可番号を行政庁側の情報で照合する。
  3. 不審に感じたら、支払いと書類の送付を止め、記録を残して相談窓口に連絡する。

1. 10月に報じられた事案

富山県と国交省北陸地方整備局は10月14日、知事名義の建設業許可通知書を偽造したなどとして、有印公文書偽造・同行使の疑いで、住所・氏名不詳の人物を高岡署に告発しました。

県の説明では、行政書士法人を称するウェブサイトを通じて、建設業許可の更新や業種追加の申請代行を依頼した業者が、手数料の振り込みと収入証紙入りの書類の郵送を求められた一方、実際には県への申請は行われず、知事名義の許可通知書が偽造されて郵送されたとされています。
県は、架空の行政書士法人を名乗り、手数料名目などで計約85万円分をだまし取ったとみています。

県は注意点として、依頼しようとする行政書士や法人が日本行政書士会連合会の名簿に登録されているかを確認し、不審な点があれば行政書士証票の提示を求めるよう呼びかけています。

同じ時期には、別の類型の報道もありました。
静岡県では、行政書士の資格がないのに、国交省に提出する特殊車両の通行許可の申請書類を法人の依頼で代理作成したとして、53歳の男が逮捕されました。
警察は情報提供を受けて捜査し、余罪も調べる方針と報じられています。
こちらは「無資格者による書類作成」の問題で、詳しくは 許認可申請での「無資格代行」に要注意 で解説しています。

2. 「無資格」と「詐欺」は別の問題

依頼先の問題は、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。

無資格型詐欺型(報道された事案)
特徴資格のない者が、報酬を得て書類を作成する実在しない法人を名乗り、申請しないまま費用を受け取った疑い
申請実際に申請される場合が多い申請されていない疑い
主なリスク書類の不備、違法な代行への関与費用の損失、許可が取れていない・失効するおそれ
確認の中心資格(行政書士登録)実在・費用の内訳・入金先・許可の真偽

「行政書士と名乗っているから大丈夫」とは限りません。
名乗りの真偽そのものを確かめてください。

3. 報道から読み取れる注意点

報道された事案から、一般的に注意したい点は次の4つです。

  • ウェブサイトのみのやり取りになっていないか。
    所在地・固定電話・面談の可否が曖昧なまま話が進む場合は、慎重に確認します。
  • 手数料や印紙・証紙を先に送らされていないか。
    報道では、手数料の振り込みと収入証紙入りの書類の郵送を求められたとされています。
  • 申請した証拠が見えるか。
    申請された事実を、受付の通知などで確認できるかが重要です。
  • 許可が実際に下りたか。
    許可通知書そのものの真偽は、通知書だけでは判断できません。

特に更新を頼んだ場合、申請が行われていなければ、有効期間が満了した時点で許可が失効するおそれがあります。
更新の期限管理については、建設業許可の「更新」手続き も参考にしてください。

4. 依頼前の確認チェック5項目

① 法人・事務所が実在するか

  • 行政書士の登録の有無は、日本行政書士会連合会の公式サイトの検索機能や、所属の行政書士会への照会で確認します(手順は公式で確認してください)。
  • 行政書士証票には、氏名、所属する事務所の名称と所在地、登録番号などが記載されるので、提示を求めて内容を確認します。
  • 行政書士法人は、設立の際に法務局で登記の手続きが必要です。
    法人名で依頼する場合は、登記の有無も確認材料になります。
  • 所在地の実在、固定電話、面談(対面またはオンライン)ができるかも確認します。

② 契約書面と業務範囲

見積書・契約書に、業務範囲(書類作成、提出、許可通知書の受領まで)と、担当者の氏名・登録番号が書かれているかを確認します。
電子申請(JCIP)を使う場合の委任の確認は、許認可申請での「無資格代行」に要注意 に詳しくあります。

③ 費用の内訳(報酬と法定手数料を分ける)

建設業許可の申請手数料は、法令で金額が決まっています。
国交省では、都道府県知事の新規許可は9万円、更新と同一許可区分内の追加は5万円で、納入方法は収入証紙の場合も現金の場合もあり、都道府県によって異なるとなっています。

見積書の「手数料」の金額が、申請の区分と一致しているかを確認します。
複数の申請を同時に行う場合も、合計は区分ごとの手数料の足し算で説明できるはずです。
説明のつかない金額を求められたら、依頼を止めて、許可行政庁の窓口に手数料を問い合わせるのが確実です。

④ 入金先と支払いの進め方

  • 入金先が、法人名義か個人名義か。
  • 先払いの割合と、返金の条件。
  • 印紙・証紙を「先に郵送してください」と言われていないか。
    納付方法は、都道府県の手引きで確認できます。(東京都は現金納付、ペイジーです)

⑤ 申請した証拠と、許可後の確認

申請の受付を示すもの(電子申請の場合は申請の記録など)を共有してもらってください。

5. 許可通知書が届いたら:許可番号を照合

許可通知書が届いても、それだけで許可が下りた証明にはなりません。
報道された事案では、知事名義の許可通知書が偽造されたとされています。

そこで、許可番号の照合が有効です。
国交省には「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」があり、国土交通大臣許可と全都道府県の知事許可の情報を検索できます。

  1. 商号(会社名)で検索し、許可番号・許可年月日・許可業種を確認する。
  2. 通知書の記載と、検索結果が一致するかを照合する。
  3. 反映に時間差があります。
    しばらくしても検索で確認できない場合は、許可行政庁(都道府県の担当課や地方整備局)に直接問い合わせる。

許可番号は、一般に「許可行政庁」「一般・特定の区分」「許可年度」「固有番号」で構成されます。
通知書の番号が合っているか確認してください。

6. 被害に気づいたら:初動と相談先

不審な点に気づいたら、次の順に動きます。

  1. 支払いと書類の送付を止める
    追加の入金や印紙・証紙の送付をしない。
  2. 記録を残す
    サイトの画面、メール、契約書面、入金の記録、通知書の写しを保存する。
  3. 相談する
    警察(相談専用電話 #9110、または最寄りの警察署)、消費生活センター(消費者ホットライン188)、許可行政庁(都道府県の担当課、地方整備局)、行政書士会。
  4. 許可の期限を確認する
    更新を頼んでいた場合は、有効期間の満了日と、申請ができているかを確認する。

多くの行政書士は途中報告してくれるはずですが、もし途中報告が無い場合はお問い合わせください。

よくある質問

Q1.行政書士を名乗るサイトは、本物かどうかをどう確認できますか。
日本行政書士会連合会の公式の検索機能や所属の行政書士会への照会で登録を確認し、行政書士証票の提示を求めます。
法人の場合は登記の確認も有効です。

Q2.許可通知書が届いたら安心してよいですか。
いいえ、通知書だけでは安心できません。
国交省の検索システムなどで許可番号を照合し、確認できない場合は許可行政庁に問い合わせてください。

Q3.印紙・証紙は、誰が購入して貼るのですか。
都道府県によって納入方法が異なるため、申請先の手引きで確認してください。
報酬とは別の法定手数料として、見積書に内訳が書かれているかを確認します。
原則、法定手数料は非課税です。

Q4.すでに入金してしまった場合はどうすればよいですか。
支払いを止めて記録を保存し、警察や消費生活センターに相談してください。
更新を頼んでいた場合は、許可の有効期間の満了日と申請の有無を急いで確認します。

まとめ

  • 依頼中、または依頼予定の相手の登録・実在・費用の内訳を確認する。
  • 手元の許可通知書の許可番号を、検索システムで照合してみる。
  • 許可の有効期間の満了日を、社内で共有する。

依頼先に迷う場合や、手元の書類に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

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